難航する「指定廃棄物」最終処分場
15年3月までの建設にあせる政府、候補先地元は猛反発[原発事故]

手作りした看板を設置する処分場候補地付近の住民たち=栃木県矢板市で9月10日

 東京電力福島第1原発事故の影響で、1キロ当たり8000ベクレル超の放射性セシウムに汚染された「指定廃棄物」。この最終処分場建設計画が、各地で行き詰まっている。環境省はこれまで、栃木県矢板市、茨城県高萩市に候補地を提示したが、地元側から猛反発を受け、全く先が見えない。工程表で示した2015年3月までの建設は、極めて難しい状況だ。

 環境省の担当者は「安全面は保証できるので(最終処分場建設は)理解してもらえると考えていた。当初思っていたより厳しい」と頭を抱える。

 指定廃棄物は、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、発生した都道府県内で国が処分する。8月3日現在、岩手=315トン、宮城=591トン、福島(旧警戒区域と旧計画的避難区域は除く)=3万1993トン、栃木=4445トン、群馬=724トン、茨城=1709トン、千葉=1018トン、新潟=798トン、東京=982トン、の計9都県4万2575トンが指定されている。

 指定廃棄物のうち、1キロ当たり10万ベクレル以下は防水措置を施した上で、管理型処分場に埋め立てる。同10万ベクレル超の廃棄物は遮断型構造の処分場で処分する。最も量が多い福島県内では同10万ベクレル超は、除染後の汚染土壌などを一時保管する中間貯蔵施設に保管する。

 環境省によると、1キロ当たり8000ベクレル超の廃棄物でも、埋め立て終了後の処分場周辺の住民の追加被ばく線量は、健康に対する影響を無視できるレベルの年0・01ミリシーベルト以下にできる。近隣住民については、200メートル四方で深さ10メートルの土地に1キロ当たり10万ベクレルの廃棄物を埋め立てた場合、70メートル離れた屋外で1日の20%(4・8時間)を過ごさないと追加被ばく線量は一般人の被ばく量の上限である年1ミリシーベルトを超えないという。

 環境省は当初、指定廃棄物の処分は、既存施設の活用を想定していた。しかし、施設のある自治体や運営業者、近隣住民から理解が得られず、一時保管施設などに廃棄物が保管されたままになる状況が各地で相次いだ。

 そのため今年3月、自前の処分場がなかったり、特に処分が行き詰まっている場合は、国有地などに12年9月までに建設場所を選定し15年3月をめどに建設する工程表を公表。現在、候補地を提示した栃木、茨城両県のほか、宮城、群馬、千葉の3県でも最終処分場を建設する方針を示している。

候補は矢板、高萩の国有地

 建設候補地は、地形や地質、住宅や公共施設、農地からの距離などを点数化し、現地確認をして決定する。評価途中では公表せず、一つに絞られた段階で、横光克彦前副環境相が当該自治体に赴いて直接報告する方法を取った。自治体には当日か前日に連絡をした。横光前副環境相は、「省内でもさまざまな方法を検討したが、複数出した瞬間にどこでも反対運動が起こり、より調整が難しくなると考えられる」と説明した。

 しかし、地元側は「寝耳に水」と、この方法に強く反発した。

 9月3日に横光前副環境相からの突然の訪問を受け、国有林への最終処分場建設を提示された遠藤忠矢板市長は「風評被害で苦しんでおり、市民感情としてとうてい受け入れられない」と拒否した。同27日、同じく市内の国有林への建設を求められた高萩市の草間吉夫市長は「被災市なのに、なぜ決まったのか。市としては断固反対する」との姿勢を示した。

 建設反対運動は激しさを増している。9月24日には、矢板市の官民一体組織「指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める矢板市民同盟会」が設立された。さらに10月10日、草間高萩市長が、矢板市の遠藤市長を訪れて会談。候補地の白紙撤回を求め、事務レベルでの情報交換など、共同歩調を取ることで合意した。

 草間市長は「国がやりやすい方法を取れば、市町村は単なる国の下請け機関になる」と怒りをあらわにし、「矢板市より先に国から説明を受けることは一切考えていない」と話した。遠藤市長も「反対同盟とともに選考過程や安全性の問題を検証した後だ」と強調した。

 建設地を提示できていない他県でも、事態は深刻だ。千葉県は柏市などで、焼却業務の一時休止が繰り返されている。打開策として千葉県は6月、焼却灰の一時保管施設を、我孫子市と印西市の市境にある下水処理施設内に建設することを決めた。しかし、地元住民らの反発が激しく、森田健作知事が細野豪志前環境相に「国が最終処分場を造るまで」との約束を取り付けたものの、地元合意のないまま建設工事に着工した。

 環境省は「打つ手がない」状況だ。

 最終処分場の建設は、放射性物質汚染対処特措法では住民同意を得なくても可能だ。しかし、細野氏からこの難題を受け継いだ長浜博行環境相は「強行に建設するような、受け入れ側を無視することはできない。時間と労力はかかるが、地元に丁寧に話をしたい」とあくまでも住民同意が前提との姿勢を示す。ただ、長浜環境相は「候補地を地元に伝えるタイミングが遅いと批判を受けたが、早く伝えれば解決しやすいわけではない。誠心誠意やる」と話すのみで、具体的な案は示せていない。

 横光氏から地元自治体との交渉を引き継いだ園田康博副環境相は10月17日、就任あいさつとして茨城県と栃木県の両知事を訪問した。地元側が求める白紙撤回については「現時点では考えていない」と述べたが、今後の対応については「候補地を提示した中で、誤解や行き違いがあったとは受け止めている。安全性を丁寧に説明したい」と話すにとどまった。

 問題解決の方法はあるのか。島岡隆行・九州大教授(廃棄物工学)は「候補地が複数ある段階で事前に自治体や住民向けに説明したら各地で反対運動が起き、収拾がつかなくなるため、今のやり方はやむを得ない面もある。はじめは強い反対があるのを前提として、健康への影響や地価の下落など住民が何を不安に思っているのかアンケートなどを実施して徹底的に調べ、一つ一つ地道に解消していくしかない」と指摘する。

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