「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第3回】
神から贈られた「ギフト」を持つ人間

【第2回】はこちらをご覧ください。

人の話を聞かないタイプですか?

 息子の絵のどこに問題があるのか。再び緊張して待つ僕の前で、医師は息子が描いた子供の全身像の絵を手に取ると、こう説明を始めた。

 「いいですか。息子さんが絵に描いた子供には、本来、人間にあるべきはずのものがないんです」

 本来、あるべきはずのものがない?

 「耳が描かれていないんです」

 耳? そうか。言われて初めて気がついた。確かに息子が描いた子供には耳がない。

 でも、耳のない子供の絵を描くのは息子だけだっけ? 考えてみると・・・。

 「そう、さっきお父さんが描いた子供の絵にも、耳が描かれていないんです」

 そう言いながら、医師は画用紙を差し出してきた。受け取って、改めて眺めてみる。中央には、息子が描いた子供の全身像。その余白には、僕が描いた子供の全身像。二人の子供には、共に耳がなかった。

 今度は僕が唸る番だった。唸りながら、軽くショックを受けていることを自覚していた。

 なぜ僕は耳を描かなかったのか? これまで耳を描いたことがあっただろうか? あれこれ記憶を掘り起こすうちに、僕は幼い頃から、落書きだろうが、高校の美術の課題だろうが、一度も人の耳を絵に描いたことがないような気がしてきた。