世界のパワーバランスが変化している今こそ、外交・安保の総合司令塔「日本版NSC」を一刻も早く創設すべきだ!
尖閣諸島[Photo]Wikipediaより

 尖閣諸島への国民の関心は、一時に比べればやや薄れているようにも見えるが、中国の漁業監視船が尖閣諸島周囲の日本領海に繰り返し侵入している。これは単なる挑発というよりも、領海侵犯の既成事実化を狙っているのは明らかだ。そして、軍艦も尖閣諸島の北方海域に展開されていることが判明している。

 中国は共産党上層部の政治決断に従って、外交、通商、公安、観光など国家一体となって政策総動員により日本に挑んできているはずだ。その一方で、わが国の民主党政府の対応は、一貫性を欠き、弱腰かつ後手後手で、国益を失いつつあるとしか見えない。

 政府の明確な意思が見えず、一丸となっていない。海上保安庁が孤独な戦いを一人演じざるを得ないのでは、と不安になるほどだ。ガス田開発などを考えれば、東シナ海全体、竹島、北方領土で、わが国は国家ガバナンスの脆弱性をさらけ出している格好ではないか。

刻一刻変化する安全保障環境に即応できる体制を

 政府の対応が一貫せず、後手後手に回るのは、こうした国家的危機に際して明確な指揮命令を行う司令塔が存在しないからだ。今こそ、外交・安全保障の総合的な司令塔機能を発揮する「日本版NSC(National Security Council、国家安全保障会議)」を設置すべきだ。

 実は、「日本版NSC」の創設にまであと一歩だったことがあった。2007年4月、安倍晋三内閣は政府として初めて「日本版NSC法案」を閣議決定の上、正式に国会に上程した。残念ながら、同じ内閣委員会で扱う公務員制度改革法案の成立を政権として優先させざるを得ず、会期末に時間切れとなって継続審議となっていた。

 しかし、民主党政権になってからは菅直人首相(当時)と野田佳彦首相がそれぞれ日本版NSC創設に関して関心を示す発言はしたが、立法作業の気配はなく、本気度ゼロのまま、今日に至っている。

 この間、あまり知られるところとなっていないが、英国では、2010年5月に発足したキャメロン首相の下の保守党・自民党連立政権によって、NSCが既に設置されている。当時、混迷の度合いを深めていたアフガニスタン問題や、リビア問題、イランへの制裁強化の動きなどを巡り、新設されたこの「英国版NSC」は意思決定の中心的な役割を担った、という。100名を超えるNSC事務局員が多様な情報を統合、分析して、政権が情勢判断を行う上で重要な職責を担ってきている。

 周辺国や世界のパワーバランスが変化するときこそ、外交・安保の戦略的舵取りが一国の死活問題につながり易い。平時から独自の事務局に集まる政府内外の豊富な情報に基づき、日本の中長期的な外交・安保戦略を静かに地道に練り上げておくとともに、刻一刻変化する安全保障環境に即応できる体制を構築しておかねばならない。

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