第10回 小林一三(その一)
百貨店や不動産を鉄道で統合する---
世界に類を見ない「独創的」経営者

 近代日本の経営者、財界人のなかで、最も独創的なのは誰だろう---。

 と、云う問いをたてるとする。

 明治以来、あまたの財界人が澎湃と登場した。この連載であつかった松下幸之助、渋沢栄一をはじめとして、岩崎弥太郎、益田孝、中上川彦次郎、原三渓、松永安左衛門・・・・・・。

 それぞれが強力な個性をもち、価値ある事業を作りあげた人物だが、こと独創的という事になると、評価は難しい。

 彼らは欧米の経営者たちが作りあげたビジネス・モデルを真似て、わが国の文化、風土に馴染むように手を加え、適合させた。

 資源も金もないわが国を、一流の工業国、貿易国にした、先人たちの偉業は尊敬に値するのは、間違いない。とはいえ、その「偉業」が輸入品であり、コピーであり、模倣品だったという事もまた、否定できないだろう。

 そんな中で、只一人、世界的にも類例のない、独創的な経営者と、正面から呼ぶことが出来るのが小林一三である。

 現在、鉄道のターミナルと百貨店を結合するのは、ごく当たり前の事だ。今日では一般化したこのモデルを世界ではじめて創始したのが、一三である。

 一三はさらに沿線にサラリーマン向け住宅を建てて分譲した。