家電業界は売り上げ増減の8割が為替で決まる。1ドル=80円を放置して、経営者ばかりを責めるのは「木を見て森を見ず」だ。

 大手電機8社の2012年9月中間連結決算が1日出そろった。売上高は、NECとソニーが微増横ばいのほか6社は前年同期比でパナソニック▲9.2%、シャープ▲16%など▲1%~▲16%の減少、最終損益では、パナソニック▲6851億円、▲3875億円など+436億円~▲6851億円と業績不振になっている。

 マスコミは、パナソニック・シャープの業績不振を経営判断の誤りとして報じている。この現代ビジネスでも、井上久男氏が優れたレポート(アップルも後押しする鴻海との提携にも尻込み・・・)(「もはやうちは負け組」と社長が危機宣言・・・)を出している。

 綿密な取材をしたのだろう。過去の過大な投資の失敗を指摘し、経営トップの判断間違いを浮き彫りにしている。経営学的な見方から個々の企業の事情を見れば、そのとおりだろう。

 本コラムでは、まったく違う視点から、業界全体が抱える問題点を指摘してみよう。その手法は、経済学なので、個別企業の経営問題は捨象される。個々の企業の業績を集計することで、業界全体の共通課題がでてくる。当事者に取材するのと違って、業界全体の統計を駆使して、分析するわけだ。経営に失敗した当事者の話を聞いても、不都合なことや、逆に自己保身と思われるようなことは聞き出せないことが多い。

ゴーンは「1ドル=80円では海外に行かざるをえない」と指摘した

 筆者が奇妙に思うのは、マスコミの報道では業績不振に陥った企業経営者の話として、円高についてほとんど書かれていないことだ。筆者も仕事柄、経営者と話をすることが多い。その中で、円高について語る人は実に多い。しかし、経営に失敗した経営者がその主要な原因として円高をあげることはほとんどない。仮に語っても、自分の経営責任を他に転嫁するものと思われて、マスコミでは取り上げてもらえないのではないか。

 円高を指摘した経営者もいた。ところが、ほとんどのマスコミでは取り上げられず、経営失敗と報じられた。そのいい例が、2月27日、会社更正法の適用を東京地方裁判所に申請したエルピーダメモリだ。27日の記者会見で、坂本幸雄社長はつぎのようにいった。

「為替については、リーマンショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替が、完全に競争力を失わせている。70%の差はいかんともしがたい。それを除けば、エルピーダのDRAMの損益は圧倒的にいい。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)も、10月30日、世界経営者会議において政府・日銀の円高対策について「努力するだけでなく、結果を出さなければ評価されない」とし、「現在の円は過剰評価されており、1ドル=80円という現在の水準は異常。企業として生き残るためには生産コストが安い海外に進出せざるを得ない」と主張した。

 日産は円高対策が進んでいる企業として有名だ。しかもゴーン氏の経営手腕はその実績が示しているが、円高に言及しないマスコミ、経営アナリストが絶賛している。それにもかかわらず、勝ち組のゴーン氏からこうした円高批判がでている。負け組になっていなかったらこそ、責任転嫁といわれずに、円高が問題と主張できたのだろう。

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