ドイツ
現在の達成率は25パーセント! 理想先行で決定したものの、現実には難航を極めるドイツの脱原発事情
Grapzow近郊のウィンドパークで建設中の風車〔PHOTO〕gettyimages

 思えば去年の夏、ドイツ連邦議会での脱原発決定は感動的だった。40年来の悲願が叶った感動で、緑の党の古参議員などは涙ぐんでいたほどだ。国会議員も普通の国民も、挙って脱原発を祝い、有頂天になった。懸念の声は、あっという間にかき消された。

 しかし、こうして勇ましく始まったドイツの脱原発は、現在、混乱を極めている。あまりに難航しているため、今年の5月には環境相の首がすげ替えられたが、新しい環境相は現状の困難を国民に知らしめただけで、事態の進展はまるで見えない。見えてくるのは、あちらこちらで起こっている責任のなすりつけ合いばかりだ。

 与党が脱原発を軽く見過ぎていたという非難も出ているが、脱原発は与党が強引に押し通したわけではなく、ほぼ全会一致で決ったことだ。しかも、長年、脱原発を提唱してきたのは、緑の党とSPD(社民党)だった。理想に走り過ぎていたのは、どちらかというと、彼らのほうではなかったか。

助成金は一般家庭と中小企業が負担

 10月16日、来年の電気代が発表された。正確に言うと、電気代に乗せられている助成金の、来年の額が決められたのだ。ドイツでは、1991年にできた再生エネルギー買取り法(2000年に再生エネルギー法として改定)に基づき、再生可能エネルギーで発電された電気は、20年に亘って全量買取りが保障されている。

 巨大なソーラーパークやウィンドパークを経営している会社、あるいは、屋根の上にパネルを付けている一般家庭や、畑の片隅に風車を一本だけ立てている農家がそこで発電した電気はすべて、20年間、その土地の電力網を持つ送電会社が買い取ってくれる。

 ドイツはずいぶん昔から、再生可能エネルギーの増進を図ってきた。エネルギーの供給を恒久的に確実にし、原油やガスの輸入に依存しなくて済むようにすること、また、再生可能エネルギーの技術の先取り、これらは国民経済の発展に大いにプラスとなるはずだ。

 しかも、再生可能エネルギーの推進は、道徳的に正しいことをしたいという、ドイツ人が常に心に秘めている願望にもぴったりと合致した。チェルノブイリで懲りていたドイツ人は、恐ろしい事故を起こす可能性のある原発や、空気を汚す化石燃料による発電よりも、自然で安全でクリーンなイメージの再生可能エネルギーに大いに憧れていたのである。そこで、その推進のために買取り制度というアイデアが生まれ、法律になった。

 もっとも、再生可能エネルギーの生産にはお金がかかるので、それを助成するための買取り価格というのは、当然、市場の電気の価格よりも高い。そうでなければ、誰もそんな物に投資しない。つまり、買取り制度は、需要と供給に基づく市場原理とはまるで違った次元のところで営まれていることになる。

 とはいえ、高く買い取った電気は、もちろん、そのままでは市場に出せない。そこで、市場の値段まで下げるため、差額分を誰かが負担して、埋め合わせなくてはならない。ドイツでは結局、差額分はそっくり電気代に乗せられ、消費者が負担させられている。

 ただし、電気を大量消費している大企業は、その負担を免除、あるいは、軽減されている(年間1ギガワット時以上使うと9割引き、10ギガワットだとほぼ免除)。大企業の国際競争力がなくなると困るからだが、助成金が一般家庭と中小企業の負担になっているという事実が、一般国民のあいだに不公平感を増長させていることも確かだ。

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