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危険手当ゼロ(フクシマ原発)原発作業員の「ピンハネ給料明細」
フライデー
福島第一原発内の休憩所で休む作業員たち。「息苦しい防護服と全面マスクを着けて30分も仕事をすると、ぐったりして何もやる気が起きない」(作業員A氏)

 いまだに事故収束への道筋が見えない、福島第一原発―。現場で働く作業員たちは、賃金の面でも過酷な状況を強いられている。

 東京電力の三次下請け企業で働いている40代の作業員A氏は、現在、福島第一原発で汚染された瓦礫の撤去などをしている。大量被爆する可能性もある危険な仕事だ。そのA氏が怒りをぶちまける。

「本当に許せません。私は日当1万3000円で働いていますが、他の企業の仲間から話を聞くと、元請けは作業員一人当たり一日5万円を一次下請けに払っているというのです。つまり一次、二次、三次と仕事が流れるうちに、3万円以上もピンハネされていたんですよ。多少の手数料は必要でしょうが、7割も給料が引かれるなんて納得できない。今年9月、社長に『ちゃんと給料を払ってください』と言うと、こう言って脅されました。『ピンハネなんてどこでもやっている。イヤなら辞めろ。その代わり作業員が一人欠ける損害賠償として、100万円払ってもらうからな!』と。こう言われては、労働者は我慢するしかありません」

 また新潟県の柏崎刈羽原発などで働いていた30代の二次下請け企業のB氏は、震災後に福島入りした作業員だ。彼も汚染水の処理など危険な仕事に従事しているが、支給金額には憤りを感じるという。

「放射線量の高い作業現場で働くため危険手当も出るという話だったので、福島に来ました。でも危険手当など、一度ももらったことがありません。手当がなければ、日当は柏崎刈羽と変わらない1万5000円。これでは、何のために危険な作業現場で働いているのか分からない。今後も手当が払われないようなら、法的手段に訴えることも考えています」

C氏が、二次下請け企業「大和エンジニアリングサービス」と交わした契約書。第4条には〝緘口令(かんこうれい)〟の記述が

「敷地外作業」が「汚染水処理」

C氏が雇用先の「前田工業」を通じて受け取った給料明細。高線量での労働を補償する危険手当の記載はない

 こうした不満は、本誌にだけ寄せられているわけではない。ピンハネや手当の不払いは、日常的に行われているという。それをうかがわせるような書類がある。左上に掲載した、給料明細書や契約書などだ。この書類を入手した、共産党いわき市議の渡辺博之氏が解説する。

「これは長崎県の建設会社から福島第一原発へ、昨年7月に派遣された40代の作業員Cさんのものです。Cさんは建設会社から『作業は原発敷地外』と言われていましたが、実際には原子炉建家内の汚染水処理などをさせられました」

 原子炉建屋の汚染水近くでは、100ミリシーベルト以上の線量がある場所もある。

 それだけ高い線量下での作業にもかかわらず、C氏は給料や危険手当をピンハネされてしまう。一次下請けが通常支給する危険手当は、原発事故当日の昨年3月11日から3月31日までは作業装備に関係なく一日約1万5000円、4月から現在に至るまでは防護服に全面マスクの作業で一日約7000円だ。渡辺氏によると、元請けによっては一日10万円近く出している企業もあるという。

「一次下請けは日当1万6000円に危険手当も付けていたのに、二次下請け企業で働いていたCさんが受け取った日当は1万1000円で手当も付いていなかった。つまり差額5000円と手当を、不当に引かれていたんです」(渡辺氏)

 C氏が二次下請けの『大和エンジニアリングサービス』と交わした契約書の第4条には〈知り得た情報(書面・あるいは口頭・目視など形態に係わりなく)は、厳に秘密を保持〉〈各種報道機関からの取材は、業務情報の如何に関わらず一切受けないものとする〉という作業員への〝口封じ〟とも取れる条文がある。またC氏の昨年7月の給料明細には、危険手当が支払われた記録はまったくない。

 C氏がピンハネや、危険手当の額について大和エンジニアリングサービスの中嶋徳彦社長に説明を求めると、「業者間の暗黙の了解事項だから話せない」と答えたという。C氏はこうした状況を不服とし、今年7月に危険手当の支給と派遣労働環境の改善を求めて労働基準監督署に訴えている。本誌も中嶋社長に取材を申し込んだが、「現在係争中のことなので一切答えられません」の一点張りだった。

「東電はこれまで手当や賃金の支給については各企業の判断に任せるという態度をとってきましたが、中間搾取のトラブルは多発しています。今年3月にいわき市議会でこの問題を指摘すると、東電の担当者はこう答えました。『危険手当は、これからも必要な経費としていく。それがしっかりと作業員に渡るように各企業にお願いし、引き続き努力していきたい』と。東電はこう明言した以上、現場任せにせず、規定の給料や手当の支給を徹底させるべきです」(渡辺氏)

 ピンハネの常態化を黙認してきた、東電の責任は非常に重い。あらためて東電に問題点を指摘した。

「それぞれの工事や環境に応じて、元請けや下請けの企業には給料と割り増しした手当をお支払いしています。各企業には契約通りの金額を作業員に渡すよう、お願いしているところです。ピンハネがあるという話は当社も聞いており、9月20日から全作業員にアンケート調査を実施し、10月下旬にはその結果をまとめる予定です」(広報課)

 原発事故から1年半以上が経つのに、東電は作業員の賃金の実態を把握していないのだ。冒頭で紹介した作業員A氏は、怒気を含んでこう話す。

「作業員の中には制限被曝量に達し仕事がなくなるのを恐れ、線量計を付けずに作業している人も大勢います。それなのに雇用する企業は、作業員を安く働かせることしか考えていない。東電も元請けや下請けと〝なあなあの関係〟で、本気で労働環境を改善するとはとても思えません」

 作業員の頑張りなしに、フクシマの復興はあり得ない。東電は、こうした作業員の言葉をどう受け止めるのだろうか。

「フライデー」2012年11月9日号より

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