[プロ野球]
田口壮×二宮清純<後編>「メジャーの野球は日本より細かい!?」

ワールドシリーズ、日本シリーズ特別対談

采配の根拠が明確なラルーサ

二宮: 2001年のオフにFA宣言をしてカージナルスに移籍します。カージナルスを選んだのは、トニー・ラルーサ監督(当時)の存在も大きかったようですね。
田口: はい。メジャーリーグ挑戦を考えていた時、アメリカから来た外国人選手に「どこでやるのが一番いい?」と聞いたことがあるんですよ。すると、ほとんどの選手から「絶対セントルイスだ。セントルイスはベースボールヘブンだから、誰もが1回はプレーしたい場所だ」との答えが返ってきた。次に「監督だったら、誰の下が一番おもしろい?」と聞くと、だいたい名前が挙がったのがルー・ピネラ、ジョー・トーリ、トニー・ラルーサの3人でした。場所も良くて監督も名将。それなら、ぜひチャレンジしてみたいと思うようになりました。

二宮: 実際、ラルーサの下で野球をやってみていかがでしたか?
田口: すごかったの一言です。あれほどきっちりと戦略を持って試合に臨んでいる人はいないと思います。気まぐれの采配は一切ない。監督に「なぜ今日、あそこでヒットエンドランをかけたのか教えてほしい」と訊ねると、常にその前の状況や過去の対戦を引っ張りだしてきてサインを出した根拠を教えてくれるんです。これはすごくおもしろかった。だから、ベンチにいる時は彼の後ろについて、ずっと何をするか観察していましたね。

二宮: すべて根拠に基づいて采配を振るう。日本だと野村克也さんのような指揮官でしょうか。
田口: 方針が明確なので試合中、選手に準備をさせるのも早い。5回を過ぎた頃には先の展開を読んで、こうなったらこのピッチャー、そうなったらそのピッチャーというパターンを全部決めている。それを前もって伝えてくれるので、選手にとっては非常に準備がしやすいんです。

二宮: オリックス時代は仰木彬監督の下で8年間プレーしました。打順をコロコロ入れ替えたり、その采配は“仰木マジック”と呼ばれましたが、裏にはかなり緻密な計算があったと聞きます。
田口: 仰木監督も、実際はものすごくデータに則して野球をやっていました。だから、あれはマジックでも何でもない。しっかりデータと経験に裏付けされている。仰木監督の場合、そこに少し遊び心を加えるので、周囲から見ると、とんでもない采配のように見えるだけなんです。

二宮: ただ移籍2年目までは昇格と降格を繰り返し、02年が19試合、03年が43試合と出場機会が多くは巡ってきませんでした。
田口: 1、2年目は、まだ監督の信用を得られなかったですね。コミュニケーションも不足していて、田口という選手がどういうタイプなのかが理解されてなかったと思います。メジャーは日本と違って“一生懸命やっていれば監督は見ていてくれる”という世界ではない。もっと監督と積極的に話をしてアピールすべきでしたね。でも2年の間にメジャーに上がったり、マイナーに落ちたりを繰り返しているうちに、自分がどういう立場にいて、何をすべきかが見えてきた。それが3年目以降につながったと感じます。