「大負けしているギャンブラーの博打」のような運用を放置するのは無責任だ! 厚生年金基金廃止案の問題点と解決策

 厚労省は、制度としての厚生年金基金を廃止する具体的な手順について案をまとめたようだ。「日本経済新聞」(10月28日、朝刊)によると、11月2日に開催される社会保障審議会の専門委員会で示す予定だという。

 通常の審議会の手順であれば、会議の一週間くらい前に事務局の「案」が出来る。これを委員に「ご説明」して回りながら、事前に意見を聞いて、事務局が会議の筋書きを作る。分科会の委員長は、事務局が作った「台本」を読みながら、議事進行すればいい。推測するに、日経の記事は、この事務局案を報じたものだろう。記事の内容は、現段階での厚労省の腹案だと考えて良かろう。

 厚労省案は、廃止までの移行期間を10年としている。これは、税制適格退職年金の廃止に設定した期間と同じだ。大きな問題は、現在、約半数の基金が抱える「代行割れ」の損失(2012年3月現在の厚労省調査で約合計1兆1千億円)だが、この一部ないし、全部を、国の厚生年金本体が負担するという。

今年3月現在で、約半数の基金が「代行割れ」

 企業年金に詳しくない方には「代行割れ」という言葉がピンとこないかもしれない。これは、以下のようなイメージだ。

 厚生年金基金は、基金を設立した企業(単独又は複数)が厚生年金に加えて独自の給付を上乗せしようとして作る企業年金制度の一つだが、このために自分たちで拠出して出来た年金積立金の他に、国の厚生年金の積立金の運用を一部代行する。

 仮に、運用の損益がゼロの状態なら200億円の積立金を持っているべき基金があるとして、その内訳が、上乗せの独自給付のための積立金が50億円、厚生年金から運用を代行している積立金が150億円だとしよう。この基金の資産運用が思うに任せず、200億円あるべき積立金が、150億円を下回って、代行部分まで食い込んでしまった状態が「代行割れ」だ。積立金が150億円以上200億円未満の基金は、代行割れには陥っていないが、これを「健全」と呼ぶにはかなり無理がある。

 今年の3月末現在で577ある(加入者は約440万人)厚生年金基金の約半数が「代行割れ」だが、残りの基金にあっても上乗せ部分の給付のために必要な積立金部分には何らかの不足を抱えている場合が多いものと推測される。

 現在、代行部分に関しては、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する厚生年金並みの利回りでいいことになっているが、企業の独自部分は「5.5%」といった低金利時代には達成の難しい想定運用利回り(予定利率)で設計されているケースが多い。

 このため、上乗せ部分の積立金以外に代行部分でもGPIF以上のリスクを取って利回りの不足を取り返そうと考える基金が多い。企業年金としての実質的な効果は、代行部分を国から借り入れてリスクを取っているのと同じで、ヘッジファンドなどと同類のレバレッジによるリスクの拡大が起こっている。

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