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当然のことながら、この島は日本固有の領土でした 極秘 CIA文書で報告された「尖閣の歴史」
おかしいのは中国です 第4部

〈このレポートは、米国の国家防衛に影響を与える情報を含んでいる。許可されていないものへの伝達や内容の暴露、あるいは、許可されていないものがそれを受け取ることは法律によって禁止されている〉

 物々しい警告が表紙に書かれた、36ページの文書。これは、アメリカの情報機関・CIA(中央情報局)が1971年5月に作成した、尖閣諸島の領有権について分析した極秘レポートだ。

『尖閣諸島の紛争』と題されたこのレポートでは、歴史的資料や背景を検討した上で、「尖閣は日本のものか、中国のものか」が論じられている。本誌は、通常では閲覧できないこのレポートを、アメリカのある研究機関を通じて入手した。

〈一般的には日本が所有するものだと受け止められてきた、東シナ海にある小島群・尖閣諸島について、北京は1970年12月、『中国の神聖なる領土の一部である』と主張した。同時に中国共産党は、その地域でアメリカのオイル・メジャーが石油を採掘することは、中国領土への侵犯になると宣言した〉

 こうした前文で始まるこのレポートでは、尖閣問題はどのように検証されているのか。尖閣の領有権に国際的な関心が高まっているいま、アメリカが歴史的に尖閣をどう見ていたかを知ることは重要である。その要所を抽出していこう。

〈中国人の中には、尖閣諸島が1403年の明朝の文献の中で触れられていると主張するものがいる。しかし、琉球諸島への日本のかかわりは、1166年頃、沖縄の最初の王が誕生した年からである〉

〈1969年、日本政府は東海大学の新野教授を代表とした、尖閣諸島付近の海底地質調査を支援した。そして日本政府は、新野氏らの調査で尖閣諸島近くの大陸棚に石油埋蔵の可能性があるという発表をした。中華民国がこの地域について正式に日本の統治権に抗議するかもしれないと最初にほのめかしたのは1970年7月20日だ〉

 このように、レポートではまず「台湾と中国が突然領有権を主張した」旨を明記している。CIAの元分析官で、現在ヘリテージ財団でアジア調査を担当するブルース・クリンガー氏が、このレポートが作成された背景について解説する。

「私はこのレポートの作成には関わっていませんが、推測すると当時のニクソン政権が、突然の中国の主張にどれぐらいの理があるのかを知るために、CIAに尖閣問題の調査を依頼したのでしょう。私は20年間CIAの分析部に所属していましたが、こうした調査依頼が政府からCIAに来ることはかなり稀です。それほど当時のアメリカのリーダーたちが、尖閣の問題について関心を持っていたということでしょう」

決定的な証拠

 中国が突然尖閣の領有権を主張したことは、今となっては当たり前の認識となっている。このレポートで最も注目すべきは、中国共産党が紅衛兵(文化大革命を支えた若者たち)向けに作った地図などに、尖閣が「中国領」と記されていないという重要な事実を指摘している点だ。レポートにはこう綴られている。

〈日本の地図だけでなく、北京と台北で出版された地図もまた、日本の主張を強く裏付けている。

 文化大革命の時、北京で出版された「紅衛兵地図」(Red Guard Atlas)には、中国が管理している地域の地図が記されている。この地図は、尖閣諸島が位置する海域は、中国の境界の向こう側であることを明確に示している。また、その地図は琉球諸島は日本のものであることも指摘している。そして同様のことは、'67年に北京で出版された「中国地図」(Atlas of China)の一般版にも見られる。検討したどの中国の地図も、尖閣諸島海域が中国国境内にあることを示してはいない〉

 こうした資料を根拠とした上で、CIAレポートは、

〈もし尖閣諸島の統治権が、国際的判断によって日本側に承認されたら、中国は日本にはるかに有利になる境界線を受け入れなければならない立場におかれるだろう。尖閣諸島統治権の日本の主張は強く、その所有権の証明責任は中国側に課せられているように思われる〉

 と、尖閣諸島の問題は日本が大変有利な立場にあると結論付けているのだ。やはりアメリカも「尖閣は日本のものである」と認識していた、ということだ。'71年6月、ニクソン大統領は沖縄返還に関連して、尖閣諸島の施政権も日本に返還することを決断している。このレポートが作成されたのはその1ヵ月前。おそらく大統領が決断する際の判断材料のひとつとなったのではないだろうか。

 前出の元CIA分析官のクリンガー氏は、このレポートの価値について、次のように話す。

「アメリカ政府はこれまで尖閣諸島について、日中のどちらかを明確に支持したことはありません。このCIAレポートが発見されたからといって、現在のアメリカの姿勢が変わることはないでしょう。ただ、領有権を明確に示したい今の日本にとっては貴重な資料となるかもしれません」

 むしろ、米政府ではなく、日本がこうした資料をどう有効に使うかが重要ではないか、ということだ。

 しかし、拓殖大学国際学部教授で、領土問題に詳しい下條正男氏は、現在の民主党政権では、こうした資料を有効活用することはできないだろうと嘆息する。

「アメリカあるいは日本などでどれほど貴重な資料が発見されようと、それを有効に利用できる政治家がいなければ、まったく意味を成しません。CIAのレポートが発見されても、いまの民主党政権はそれを有効に活用することなどできないでしょう。それどころか党内融和のために、今月の16日には外交オンチの鳩山由紀夫元首相を最高顧問に復帰させてしまった。これでは中国や韓国に『尖閣も竹島も譲歩します』というメッセージを発信しているようなものです」

 政府からはこの資料を活用しようという声は聞こえてこない。せっかくの「宝」を腐らせてしまうような政権に、尖閣問題の解決など期待できそうもない。

(取材/飯塚真紀子)

「週刊現代」2012年11月3日号より

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