インサイドルポ シャープ経営陣社長と会長の戦いが始まった ジャーナリスト 井上久男

2012年11月09日(金) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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 片山氏にとって、自分が育ててきた液晶事業を梃子に復権を狙っており、それをすべて手放し、鴻海の軍門に下ることを認めるわけにはいかない。片山氏については、「自分の名誉と復権だけを第一に行動しているように見える」と言う者さえいるし、社内からは「東大卒の片山さんは負けず嫌い。自分の面子で経営者としての失敗を認めないばかりか、また失敗を繰り返そうとしている。この局面ではシャープは外資の軍門に下ってでも残った社員が歯を食いしばり生き残らなければなりません。そうでないと希望退職で去る仲間たちに向ける顔がありません」(前出・幹部)との声まで出ている。片山氏の振る舞いは、戦地で玉砕を強いて自分だけは生き残った帝国陸軍の高級参謀のようである。

 外資の傘下に入る提携交渉に誰もが満足する「結論」はない。すべてとはいかないが一定数の社員を守り、社名を残すために苦渋の決断が必要であり、経営者は泥をかぶらなければならない。

 かつて今のシャープと同様に倒産寸前の経営危機に陥った日産自動車は、いったんはドイツのダイムラーから51%の資本の受け入れを認めることを決断した。ダイムラー側が突きつけた条件は取締役全員の退任だった。当時、筆者は朝日新聞経済部の担当記者としてその交渉過程をつぶさに追っていたが、塙義一社長(当時)には危機感と悲壮感が同居していた。

 日産とダイムラーとの提携交渉は破談となったが、その代わりに仏ルノーから36・8%の資本を受け入れ、カルロス・ゴーン氏の指揮下で、見事に再生した。その過程では、工場閉鎖や人員削減、系列解体などを実行して批判も浴びたが、結果として新しいビジネスモデルを生み出すことに成功。当時の日産首脳は「リストラして事業を立て直すにも資金が必要。その額は7000億〜8000億円だったが、資金を得るためには外資の傘下に入る選択肢しかなかった」と語る。今のシャープと状況は重なる。

このまま潰れるのを待つのか

 その後、塙氏はひっそりと表舞台から消え、経営責任を重く受け止め、今でも叙勲や名誉職への就任はすべて断っている。

 しかし、シャープの場合、「戦犯」でありながら片山氏が「俺が俺が」でしゃしゃり出てくる。9月半ば過ぎ、「シャープと米インテルが資本提携」(毎日新聞)という突拍子もないニュースが流れたが、シャープは完全に否定した。シャープの事情通がこの経緯を、「これは片山さんの完全なスタンドプレーから出た話。鴻海に揺さぶりをかける意味もあるのでしょうが、逆に機嫌を損ねかねません。ニュースが流れた後、社内はそんなことを画策する時間と金があるのだったら、早く液晶事業の抜本的な再建策をまとめろといった雰囲気でした」と指摘する。

 前出の幹部が言う。

「うちはパナソニックやソニーに比べて所詮二流企業。でも逆に目立たずしぶとくこつこつやって、たまに大企業を出し抜くことが得意な社風でした。でも片山さんの時代になって身の丈を超えた経営が始まり、大風呂敷を広げるようになりました。結局はシャープの『DNA』に合わなかった経営者であり、そうした人を選んだ町田さんにも任命責任があると思います」

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