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インサイドルポ シャープ経営陣社長と会長の戦いが始まった ジャーナリスト 井上久男
週刊現代 プロフィール
〔PHOTO〕gettyimages

 社員は社長の言動をよく見ている。その一声で奮起したり、一気にやる気を失ったりする。シャープは、トップの迷走が会社を危機に陥れる典型例といえる。いま、内部で何が起きているのか。

「器」じゃなかった新社長

 台湾の鴻海精密工業との提携交渉など、今春からメディアを賑わすシャープの経営難は一向に改善が見られないばかりか、日に日に悪化し、もはや崖っぷちに立たされている。

 株価は150円を割り、41年ぶりの安値を更新。社債は、格付け会社からは「投機的水準」に2段階も格下げされた。

 メーカー経営の根幹に関わる投資や技術の戦略が世の中の変化についていけなかったことがシャープの敗因と分析する専門家もいるが、筆者はそれだけだとは思わない。

 シャープの悲劇の一つは、新社長に就任した奥田隆司氏が、連結で5万7000人もの大企業を牽引できる「器」ではなかったことにある。

 今年4月に奥田氏が新社長に就任した直後、シャープ社内でこんなことが起きていた。

 毎朝8時25分、始業の挨拶を告げる社内放送が日本語、英語、韓国語、中国語の4ヵ国語に切り替わった。奥田新社長がグローバル経営を加速させていくことを意識した取り組みということだったが、社内からは「これでグローバル経営などといえば鼻で笑われる」「社内放送を変える程度のことは、社長ではなく総務部長の仕事でしょう」といった声が漏れた。

 社長就任前の奥田氏は社内外でほとんど知られていなかった存在で、「社員食堂で毎日ランチを食べているまさかあの人が社長になるとは思わなかった」と若手社員が驚いたほどだ。

 名古屋工業大大学院(修士)卒業後に入社、購買でコスト削減を担当する地味な仕事に励み、管理職時代の評価は「堅実でリスクを取らないサラリーマンの鑑」というもの。

 奥田氏の社長としての資質を窺わせるようなマネジメントが最近、あった。

 シャープは9月27日、10月1日付の組織改革と人事異動を発表した。16事業本部を4つのユニットに括り直し、その中で人材交流を活発化することなどが狙いとされているが、シャープの現役幹部は「実際には事業本部はそのまま残ります。社内でも何が狙いかを理解している人がいない、全くもって意味不明の改革です」と言う。

 それだけではない。この幹部が続けて言う。

「事業本部長クラスなどの中には若い有能な方もいて、奥田社長に会社の再建策を進言していますが、奥田さんは『経営改革は専門家に任せればいいんだ』と言って外資系コンサルタント会社に丸投げしています。それを聞いたとき、社長が経営の専門家ではなくて誰が専門家なんだと思いました。だからこの会社はもう終わっているのです」

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