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第2部 中国の強みは安い労働力と広大な市場 日本の先端技術はまだまだすごい
中国が仕掛ける日本への「経済封鎖」 最後に困るのはどっちだ?

おかしいのは中国です
ユニクロは中国ナシでは生産も出来なくなる〔PHOTO〕gettyimages

「1ヵ月後の指導者の交代を機に、中国は新たな経済制裁を発動するかもしれない」。中国ビジネスに携わる日本企業の共通認識だ。数兆円にも上る経済的損害に、日本は耐えられるのだろうか。

本当にずるいやり方

「世界のほとんどの国は平和主義であるのに、日本とアメリカは常にトラブルメーカーじゃないか!」

「日本に対していますぐ経済制裁を実施せよ!」

 中国最大の国際情報紙『環球時報』のウェブサイトには、怒れる中国人による反日感情剥き出しの意見が次々に書き込まれている。日本が尖閣諸島を国有化してから1ヵ月が経ってもなお、中国人の反日熱は冷める気配を一向に見せない。

 中国外交部の洪磊副報道局長は、そんな中国人民の怒りを煽るかのように「問題を大きくした責任は日本にある」と繰り返し、そして今後中国が・対抗措置・を取る可能性を示唆している。

 周知の通り、中国はすでに日本に対する「経済制裁」をいくつも実施している。それは最も軽いところから始まっており、日本の輸出入品に対する貨物検査率の引き上げや日本製品の不買運動などが公然と行われている。ソフトブレーンの創始者で、現在北京に在住する宋文洲氏がその実態についてこう明かす。

「貨物検査率の引き上げによって通関に影響が出始めているため、モノが市場に流通する動きが遅くなっています。これが日系企業に深刻なダメージを与えています。日本からの部品や材料が予定通りに入ってこないため、中国の工場では生産のスケジュールが立たなくなっているのです。

 さらにはワーキングビザを発行するスピードが遅くなっている、とも聞きます。ヒト、モノの流れが大変遅くなっているので、今後日系企業の活動に抜き差しならない影響を与えていくと思われます」

 不買運動も日系企業の頭痛のタネとなっている。ネットを中心に広まる「不買運動」は、反日暴動が収まったいまでも、とどまるところを知らない。現在中国国内では「この日本企業の商品は買ってはいけない」という〝不買リスト〟が出回っており、ソニー、キヤノン、資生堂、武田薬品などの名前があがっているという。

「特にアサヒビールやパナソニック、第一三共などの企業のイメージは中国国内では最悪です。8月下旬、これらの企業が『釣魚島に日本人を上陸させる計画の資金的援助をしている』『右翼組織に献金している』という報道が中国内で流れたからです。もちろんこうした報道に根拠はないのですが、一度ネガティブな報道がなされれば、ネットを通じていつまでも拡散することになるので、これらの企業は今後中国で苦戦するでしょう」(在中国日系メーカー社員)

 さらには中国中央テレビをはじめとしたメディアで、日系企業の広告や特集番組・記事などを流さない、という一種のボイコットも起こっているという。中国は国をあげて日系企業のブランドイメージを低下させようと躍起になっているのだ。

 中国国内だけではない。日本の観光業のダメージも深刻だ。昨年、日本には100万人以上の中国人観光客が訪れ、約2000億円を日本に落としている。しかし、JPモルガン・チェースの試算では、尖閣問題の影響で'12年に日本を訪れる中国人観光客は昨年比で70%も減少し、日本の観光収入は670億円減少するとなっている。

「日本航空にはこの9月から11月だけで、約2万1000人の団体客のキャンセルが、全日空においては同期間で約4万6000席のキャンセルが出て大打撃を受けたため、中国路線の便数を減らすなどの対応を迫られています。さらに9月に富士山を訪れた中国人の数が通常より90%も減ったという話もあります。北海道から沖縄まで、日本の観光業はあまねく被害を受けています」(大手旅行代理店関係者)

 検査率の引き上げ、不買運動、そして訪日自粛。こうした「制裁」だけで、日本のGDPは1兆円程度下がるとの試算もある。中国は「真綿で日本経済の首を絞める」つもりなのだ。

 だが、この程度の「制裁」では、中国人民の溜飲は下がらないようである。ネット上では「中国政府はなぜ弱腰なのか。震災で弱りきった日本経済を壊滅させることぐらいはできるはずだ」と、政府の姿勢を批判する声まで出てきているのだ。

 そして実際に中国が〝次の一手〟を打つ恐れは大いにある。信州大学経済学部の真壁昭夫教授は、11月に中国で指導者が交代した後、中国の新指導者たちは国民の対日強硬論を抑えきれず、さらなる経済制裁を実行するのではないか、と指摘する。

「次期指導者となる習近平は、中国の国民に『お坊ちゃま』という印象をもたれているため、〝強いリーダー〟というイメージを作り出す必要があるのです。そして、その演出をするための絶好のターゲットが日本なのです。11月以降、中国がさらに強気な姿勢で日本に経済制裁をしかけてくる可能性は十分にあります」

 さらに、中国在住の日本人ジャーナリストがこう付け加える。

「習近平は台湾に近い福建省を統治した経験から、台湾に太いパイプを持っている。そのため、部品や原材料などは日本ではなく、台湾からの調達で賄おうとする可能性があります。最初はこうした・日本外し・で攻めて、次第にその攻撃の手を強めていくのではないでしょうか」

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