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孫正義1兆5000億円のバクチは成功するのか?ソフトバンク株はいま買うべきか、売るべきか
'07年以前からの知り合いだというダン・ヘッセCEO(右)と孫正義社長〔PHOTO〕gettyimages

「男子として生まれたからには世界一を目指す」。こう大風呂敷を広げた孫正義社長。ソフトバンクの未来はバラ色か、それとも—。日米同時取材で検証する。

投資家が投げ売り

「この投資は成功するのか? ということですが、答えましょう---。
自信が、あります。

 これまでソフトバンクはKDDIさんに追いつけ、追い越せという状況でしたが、そんなものは全部誤差だった(笑)。これからは世界のなかで2位なのか、3位なのか、そういう議論をしようじゃないか。今日からステージが変わった、ということなんです。(ソフトバンクの株は)今こそ買いだ!今買わずにいつ買うんですか!?」

 10月15日、米国第3位の携帯電話会社スプリント・ネクステル社買収発表の会見に挑んだソフトバンク・孫正義社長は異常なほど高揚していた。同じ壇上に立ったスプリント社のダン・ヘッセCEOが「今回の取引は我が社の株主にとって最高の選択だった」とあくまで経営者の視点から冷静な発言に終始したのに対し、孫社長のハイテンションが際立った。

 ときにジョークを交えながら、満面の笑みで一人熱弁を振るう孫氏の迫力に圧倒されて、350人超が詰めかけた会場は異様な雰囲気に包まれた。

 買収報道が出た12日以降、同社の株は2日間で約20%の下落、時価総額1兆円が吹き飛んだ。201億ドル(1兆5700億円)となる巨額の買収費用が同社の財務に悪影響を与えるとして、投資家の投げ売りを呼んだのだ。そんな〝歴史的暴落〟から一転、会見翌日には孫社長の熱弁に呼応するように、10%も持ち直す急回復を見せた。

 わずか5日間のうちにジェットコースターのように目まぐるしく乱高下したソフトバンク株(次ページ図参照)。一般の投資家はどう先行きを見ればよいのか。

 株価に強烈なインパクトを与える買収が実現したのは、孫社長の経営手法によるところが大きい。元社長室長として孫社長に仕えた三木雄信氏が解説する。

「スプリント社との交渉は今年5月頃から始まったと聞いています。これほど大きな案件がたった5ヵ月でよくまとまったと思われるかもしれませんが、孫さんにしてみれば普通のこと。時間をかければ、買収話は刻々と変化する。短時間で決着をつけないと、まとまるものもまとまらないというのが孫さんの考え方です。ここがサラリーマン経営者とはまったく異なる」

 そもそも企業買収と借金は、孫社長の経営哲学、いわば「孫氏の兵法」と言っていい。'06年のボーダフォン買収時も1兆3000億円の借り入れを実施。孫社長は常々「大きな借金を抱えている会社は、国も銀行も潰さない」と公言している。次々と借金をつくり、企業買収を繰り返す孫社長の目的はただ一つ、ソフトバンクを「世界一の情報通信企業」にすることだ。

 孫社長は国内携帯電話最大手NTTドコモに敵愾心を燃やしていると見るのは、前出の三木氏だ。

「ネットバブル時代、ソフトバンクの時価総額はかなり大きくなりましたが、ドコモだけは抜けなかった。彼はそれがずっと引っかかっていて、いつかドコモを抜いてやると思い始めたんです。6年前のボーダフォン買収も今回も、すべてはドコモを抜きたいという悲願が根底にある」

 ドコモどころか、孫社長は会見で「いつかNTTさんを買収することだってありえる」とまで発言し、会場の失笑を買った。

 ただし、今回の買収劇を手放しで賞賛できるほど、話は簡単ではない。1兆5000億円もの資金を投じてスプリント社を買収することで、ソフトバンクにはどういったメリットがあるのか、いまだに不明瞭だからだ。一部の投資家は、そこに疑念を感じている。だからこそ、株価は乱高下を続けているのだ。

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