読書人の雑誌『本』
『アメリカを動かす思想』 著者:小川仁志
閉塞感を打ち砕く
「プラグマティズム」という道具

 よくも悪くもアメリカは世界一の国であり、同盟を組む日本人の私たちにとっては、最重要国だといっても過言ではない。アジアの国々も大事だが、尖閣問題で中国が先鋭化した際、アメリカが味方してくれてホッと胸をなで下ろした人も多いのではないだろうか。

 しかし、もしそれがもともとアメリカの仕組んだ陰謀で、中国にけしかけていたとしたらどうだろうか。日本に自国の軍事的プレゼンスの重要性を分からせるための巧妙な罠だったとしたら・・・・・・。今度は急に背筋がぞっとしてくるのでは?

 真実は分からないが、少なくともアメリカが、実を取るためになら何でもやる国であることだけは確かだ。アメリカは別に正義の味方でも、キリストのような善人でもない。キリスト教徒が多いのは事実だが、キリストなら戦争はしないだろう。

 では、アメリカとはいったいどんな国なのか?これは難しい問いだ。ある国の本質を知るための手掛かりとして、その国に支配的な思想に着目するという方法がある。今回私が『アメリカを動かす思想』(講談社現代新書)という本を書くに至ったモチーフもここにある。たとえば、韓国の本質を知りたければ儒教、イラクの本質を知りたければイスラームに着目すればよい。

 その国の国民が行動原理としている思想があれば、その国全体もその思想によって動いていると見ることができるのだ。アメリカの場合、よく挙げられるのはリベラリズムやキャピタリズムといった思想である。

 リベラリズムとは、自由主義とも訳される多義的な概念であるが、一言でいうならば、行動原理として自由を最も重んじる思想だということができよう。たしかにアメリカは、イギリスから逃れてきた人たちが、自由を求めて建国したのだから、これはよく分かる。キャピタリズムもここから派生している。彼らは自由に経済活動を行い、お金儲けをすることを求めているのだ。



◆ 内容紹介
アメリカ人にとっては、ふだんは、ほとんど意識すらされない彼らの血肉となっている思想、それがプラグマティズムである。実際に「プラグマティズム=知識のあくなき実践」はアメリカ社会において、ありとあらゆる局面で見られる。その結果、失敗も多くあれど、たゆまなくイノベーションが繰り返され、社会に大きなダイナミズムが生まれているのもまた事実である。本書では、プラグマティズムの起源と発展の歴史を辿るとともに、自由、民主主義、資本主義といったアメリカを代表する思想もまた、プラグマティズムがその土台となっていることを確認する。そしてさらにプラグマティズムの考え方を輸入することで、「動けなくなっている日本」に風穴をあけることを説く。アメリカを動かしているプラグマティズムを知る格好の入門書。