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中国人が最も嫌う日本人政治家が辞任して、日中摩擦の矢面に立たされる野田首相の苦悩
〔PHOTO〕gettyimages

 10月25日夕刻、私のところへ続々と、北京の中国人からメールが届いた。

 「石原がついに辞めたというのは本当か?」
 「辞めた後はどうするつもりなのか?」
 「今晩はハッピーで祝杯を挙げるつもりだ」

 長らく連絡を取っていなかった中国メディアや研究機関の知人からも、「石原辞任」にかこつけた挨拶メールが来た。それで改めて、石原慎太郎という政治家のアジアでの"影響力"を再認識した次第である。

 中国人に「嫌いな日本人政治家」の投票をさせたら、ダントツでトップに立つこと確実なのが、石原慎太郎前東京都知事だ。範囲を日本人だけでなく、「嫌いな外国人政治家」に広げたとしても、やはり一番に違いない。それほど石原氏は、中国で嫌われている。しかも、ただ「石原」と呼ばれることはあまりなく、「アジアに騒乱をもたらしている石原」とか、「妄言大王石原」といった"形容詞"が先につくことが多い。

 中国人は、4月に石原氏が「尖閣諸島を東京都が購入する」と宣言して以来、日中関係が翻弄されたと考えている。中国人にとってみれば、石原氏こそが「諸悪の元凶」なわけで、「こんなお騒がせ政治家はいない」というわけだ。

「地方が国政に関与することはできない」が理解できない中国人

 10月25日、新華社通信は、次のように速報した。

< ここ数ヵ月間、釣魚島を買うという茶番劇を煽動していた石原慎太郎が、25日午後、記者会見を開いて辞任を発表した。

80歳と老いても寂しくない石原は、3つの夢想を抱いていた。第一に、釣魚島を購入すること。第二に、息子の伸晃を自民党総裁に当選させること。第三に、新党を作ることだ。すでに二つの夢が破滅したいま、身体が丈夫なうちに最後の夢をかなえようというわけだ。

だが、石原新党が今後、大化けすることはないだろう。日本人は、民主党のこの3年間の「破壊外交」に失望している。だから日本人は、なおさら経験の浅い新党を支持しないだろうからだ・・・ >

 中国人と政治談義をしていて、石原氏についての話題になると、とたんに目付きが険しくなる。そして、まるで何百年もの仇敵について語るかのような怒気が籠もってくる。石原の「石」(シー)という発音が、本当に石でも噛むように硬くなるのだ。

 そんな時、私はよく、中国人は石原氏の日本での影響力を、過大評価しすぎていると思ったものだ。それは、政治体制の違いから来る誤解だろう。つまり中国では、首都・北京のトップである北京市党委書記ともなれば、ある意味、中央の政治家以上の権限を有している。かつて北京市党委書記だった陳希同が、共産党中央トップの江沢民の命令に耳を貸さなかったのは、有名な話だ(そのことで陳希同は最後には逮捕されてしまったが)。

 今年7月に、胡錦濤主席の子飼いである郭近龍が、新たに北京市党委書記に就任したが、そこへ至るまでには、胡錦濤と江沢民・習近平との間で、壮絶な権力闘争が起こったことは、前にこのコラムで書いた通りだ。ともかく、首都・北京トップの権力たるや、絶大なのだ。

 私が、「ただの47都道府県の一首長にすぎない」といくら説明しても、中国人は「でも東京都知事だろう」と反論する。図らずも、石原氏が25日の辞任会見で、自ら吐露していたように、「地方が国政に関与することはできない」といくら説明しても、中国人は肌感覚として、理解できないのだ。

 そのため、東京都知事を辞任した今となっては、中国人としては、石原氏がゾンビのように国政の檜舞台で復活して活躍することはないという「確証」を得たい。だから、上記のような新華社の論評となるのである。

 この石原氏に対する中国の徹底した嫌悪感は、李登輝・元台湾総統に対するものと似通っている。李登輝氏は、今年1月の台湾総統選挙で、投票の3日前に民進党候補者の蔡英文支持を、電撃的に発表した。そしてこの「政治的賭け」が裏目に出て、蔡英文は落選し、89歳になる李登輝氏の政治生命も、ようやく尽きた感がある。それで中国はホッと一安心した。そうしたら、4月に石原という今年80歳になる「もう一つの逆賊」が頭を擡げ、その発言に振り回されたわけだ。

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