官々愕々
震災復興予算「見直し」のウソ

〔PHOTO〕gettyimages

 復興予算のおかしな使い方に批判が集まっている。税務署の耐震化工事やシーシェパード対策など、あまりのひどさに、野田政権も問題を認め、来年度復興予算の改善策を打ち出した。一見、物事がよい方向に向かうようにも見えるが、実際はその逆だ。

 予算の名目と実際の使途の乖離の問題は、実は毎年生じている。昔から、一般会計で優先順位が低くて認められないものは、特別会計予算やシーリングの特別枠の中に説明を変えて入れ込んでいる。それでダメなら補正予算で再チャレンジする。つまり、二軍三軍の予算である。何か新たな枠ができたら、官僚はすぐにそれに合わせて予算を作る。復興予算はその餌食になった。

 今回の問題を考えるのに、最もよいテーマが学校の耐震化の問題だ。一般に「学校の耐震化」と言えば、必要性、緊急性が高いと考えられる。マスコミもそう報道する。つまり、政府もマスコミも、復興予算の事業の「必要性」と「緊急性」をポイントと考えているようだが、これが大きな間違いだ。仕分けのポイントは、その予算が、復興予算の趣旨に合致しているかどうかだ。その観点からは、全国の学校耐震化の予算も趣旨に合致しているとは言えない。なぜだろう。

 震災後、多くの国民から、多額の寄付が被災地に向けて送られた。「自分が苦しくても少し身銭を切りますから、被災者のために使ってください」と考えたからだ。しかし、震災があったからといって、被災地以外の学校に耐震化のための寄付が集まったという話は聞いたことがない。復興予算に当てはめれば、増税を受け入れるから被災地に届けて下さいということになる。こう考えれば、被災地に向かわない予算はカットすべきということになる。

 学校の耐震化をしたければ、通常の予算で、整備新幹線3線同時着工、地方の高速道路の拡張予算、大金持ちの高齢者の医療費一割負担のための予算などを切れば良い。それでも足りないなら、財源として別途増税をするべきである。

 国民の善意にたかって関係ない予算を潜り込ませるのは、詐欺師の手口と言ってもよい。

 復興基本方針に何の理由もなく付け加えられた「日本再生」とか全国の「防災、減災『等』」などという無関係な予算を潜り込ませるための言葉は削除して、この予算は被災地限定で使うということを明示すべきだ。また、来年度からその運用を改善すると言うが、そうではなく今年からやるべきだ。

 さらに、来年度については、10月16日の野田総理の発言で、「被災地の復旧、復興が『最優先』」と言っている。これはまさに官僚の作文である。被災地が「最優先」だが、被災地以外の防災などは「優先」ということだ。また、「真に必要な事業に厳しく絞り込む」とか、「学校の耐震化『など』緊急性の高いものは除き、被災地以外の事業は外す」などと、仕分けのポイントを被災地支援かどうかではなく、その事業が「必要かどうか」、「緊急かどうか」にすり替えてしまっている。結局、通常の予算で行うべき全国の事業を復興予算に盛り込ませることを堂々と宣言してしまった。

 全国防災は何年たっても終わらない。何か作るときは常に防災対策を施すから、公共事業は全て防災対策ということができる。つまり、復興予算で全国に公共事業をばら撒くという構造が固定化されつつあるのである。自民党もこの構造は歓迎だから、全国防災の柱をなくせとは言わないはずだ。国民の善意にたかるシロアリが誰なのかが良くわかる。

『週刊現代』2012年11月3日号より

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