特例公債法と週刊朝日問題で露呈するマスコミの病理。人間関係重視の取材で、公開の場でのロジカルな議論から逃げてしまうとはあまりに情けない

 今週はマスコミを考えてみたい。取り上げる題材は、特例公債法と週刊朝日問題だ。

 まず特例公債法。特例公債法が年度内に成立しないと、今年度予算では歳入38兆円が不足する。その場合は、日本版「財政の壁」になる。最終的に特例公債法が成立しないと大変なのは当然であるが、財務省はすぐ成立しないとまずいと煽り、お得意の「レク」を自、公に対して行っている。

 これにマスコミを含めてころりと騙される。先日、あるマスコミ関係者と話をしたら、「特例公債が通らないと資金繰り債発行は違法」との財務省のご説明をオウムのように繰り返していた。しかも、この話は閣議決定されたものだと。

 財務省の資料では「財務省証券の発行は、特定公債法案に基づく歳入を見込むことができず、かつ、当該歳入以外にはその償還のための財源が確保できていない状況では、財政法上許容されないと考えている」と書かれている。

 一見もっともらしいが、最後の「考えている」に着目しよう。これは、質問主意書に対する答弁書(9月11日閣議決定)からの抜粋と書かれているので、「考えている」の主語は、「政府は」だ。なにも予備知識がなくても、日本が法治国家で三権分立であることを知っていれば、法律の解釈を政府が行うのはおかしいということくらいすぐにわかる。まあ、あくまで政府が考えているというレベルの話だ。

 一方、財務省証券の発行などの資金繰りは、今年度一般会計予算の予算総則第8条で、「財政法」第7条第3項の規定による財務省証券及び一時借入金の最高額は、 20,000,000,000 千円とする」と書かれている。予算は国権の最高機関である国会を認めたモノで、その効力は法律と同レベルだ。

 これでわかるだろう。資金繰りの財務省証券を発行できないというのは「政府の考え」であるのに対し、発行できるというのは「国会の議決」だ。国民としてどっちを選択したらいいのか明らかだろう。

特例公債法案を分割すればいい

 もちろん特例公債法は国会で成立してもらわなければいけない。財務省のやることは、財務省証券、一時借り入れその他でギリギリいつまで持つかという情報を政治家に示して、与野党間で真剣に交渉してもらうことだ。

 大胆にいえば、予算の資金繰り債だけの条項を補正予算で修正すると、年度末までに特例公債法が成立すればいいと思われる(来年になれば、前倒し債(来年度の収入)の発行も可能になるので、資金繰りだけの観点でいえばなんとかなる。政府預金の取り崩しなどの他の手もいろいろと考えられる)。

 民主党は、野田総理が「近いうちに解散」といったが、それを反故にしようとしている。今選挙したら惨敗必至なので、解散先送りを隠そうとしない。一方、自民は年内解散を求めて、それが担保できなければ特例公債法を通さないかまえだ。先日の3党党首会談でもその溝は埋まらなかった。

 かといって、財務省がしゃしゃり出て、11月までとデットラインを切るのはやりすぎだ。

 先週末には、「特例公債法案成立めど立たず 長期金利に影響」という趣旨の記事が各紙に出ていた。こうした記事が各紙にできるのは財務省のレクだろう。これも行政府の分を超えている。そのお先棒をマスコミも担いでいる。特例公債法の成立が年度末までというのがあまりに政治として無責任というのであれば、政治家の間でしっかり議論すればいい。

 今のまま、財務省シナリオの上で与野党が動いていたら、本当に「財政の壁」から日本経済が落ちてしまう。10月29日に招集する臨時国会の冒頭で、特例公債法案を「11月~来年1月分の歳入」と「来年2月~3月分の歳入」の二つに分割して、とりあえず「11月~来年1月分の歳入」だけを成立させたらいい。そうすれば、政治家間の議論ができる時間が作れ、当面の「財政の壁」の危機が遠のく。

 その場合、「来年2月~3月分の歳入」は総選挙後に成立という約束が民、自、公の3党でできれば、「近いうち解散」を担保できることとなる。今の3党間の信頼関係が崩れている場合では、これもやむを得ないだろう。その上で、特例公債額を圧縮するために、定率繰入の停止で今年度一般会計の歳出を圧縮しておいたほうがいい。

 米国の「財政の壁」はGDPの3.7%だが、日本ではGDPの8%だ。扱いに失敗したら洒落ではすまない。マスコミは財務省にのせられないで、しっかりした情報を報じなければいけない。

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