第7回 ヘンリー・フォード(その一)
自動車の発明---
アメリカ国民に「移動の自由」を普及させた

 二十世紀は、アメリカの時代であった・・・・・・。

 そう定義しても、さほど大きな反発は受けないだろう。二度にわたる世界大戦を制し、社会主義陣営を圧伏しながら、繁栄を謳歌しつづけた―その間、何度か、大小の不況を経験したとしても―地上最大の帝国として二十世紀に君臨してきた。

 二十世紀、アメリカは世界文明に大きく寄与した。油田開発によるエネルギー革命、津々浦々を結ぶ鉄道網、湯水のように溢れんばかりの収穫をもたらした農業の技術革新、映画、ラジオ、テレビなど娯楽の勃興と大衆化・・・・・・。

 その中でも、やはり特筆すべきは、自動車の発明と普及であろう。

 たしかに自動車、特にガソリン自動車は、アメリカ独自の発明ではない。ドイツ、フランス、イギリスなどにも多くの自動車メーカーが存在していた―そのうちの多くは、淘汰されてしまったが―。

 けれども、自動車を単なる「馬なし馬車」ではなく、人間生活の新しい局面を切り開く発明として作りあげ、普及させたのは、アメリカに他ならない。

 アメリカ建国精神の本質的価値である「自由」を、すぐれて精神的な価値であるばかりではなく、物理的な拡がりと豊かさをもうらづけたのが、自動車であった。

 何処にでもいける自由、一人で大陸を横断し、あるいは都市へ、郊外へ、働き口を探し、あるいは、山に河に遊びにゆく。

 自動車に乗って生活必需品を購入し、あるいは市場に農産品を売りにいく。中間搾取の介在しない、個人同士の取引も可能になった。

 そして、アメリカにおける自動車の普及を先導したのが、ほかならぬヘンリー・フォードその人であった。