ネットにはびこる「私刑執行人」たち

 先日、「ネット自警団」という言葉を紹介した、気になるインターネット上のニュース記事を見つけました。

「ネット自警団」とは、社会的に許されない行為をした人たちや、「悪事自慢」をする人たちの、勤務先や住所、電話番号をはじめとする個人情報を暴いてネット上に晒し、ターゲットを処罰しようとする人たちのことを指します。

 このニュース記事の中では、

●ツイッター上で悪事(飲酒運転、喫煙)自慢をした19歳の女子短大生の個人情報を暴き、ミクシィ、ツイッターを退会に追い込んだ(2011年)
●ホームレスをいじめたことをミクシィ上で自慢した大学生を内定取り消しにした(2009年)
●虚偽の申告でサイゼリヤから3000円の返金を得たことを自慢した男子高校生の、自宅 の電話番号、学校名を暴き、自宅と学校に嫌がらせの電話を殺到させた(2008年)

 といった「ネット自警団」の事例が報告されています。

 こうした「ネット自警団」の存在については、賛否両論あると思います。犯罪の抑止力につながる「必要悪」という見方や、警察が動かないから「私刑」を行わざるをえないという論理、「正義の名を借りたリンチにすぎない」という糾弾などが可能でしょう。

勘違い・人違いの可能性がある

 私は個人的に、こうした「ネット上の私刑執行人」たちに対しては、ネガティブな捉え方をしています。その最たる理由は、勘違い・人違いという初歩的なミスが発生しうる、というシンプルな事実です。

 これは懸念ではなく、実際、「大津いじめ事件」の際にも人違いが起こり、ネットユーザーが名誉毀損の疑いで書類送検されています(参考)。他にも、容疑者と同姓だっただけで犯罪者扱いを受けた北海道の不動産会社(参考)や、10年以上も人違いで中傷続けた芸人のスマイリーキクチさんの事件も有名です(書籍『突然、僕は殺人犯にされた』)。

 また、このような事件は実際には起きていませんが、「犯罪自慢」を装って他人を陥れることも容易にできてしまいます。例えば、あなたを憎む誰かが、あなたの偽のツイッターアカウントを作り、巧みに飲酒運転なり万引きなりを“告白”させたとします。それを拾った「私刑執行人」たちは、全力で偽アカウントの情報を洗い、あなたの個人情報を暴くでしょう。あなたの職場には正義感に駆られた人たちからの電話が殺到し、家には誹謗中傷にまみれた手紙が届きます。

 偽アカウントの運用がうまければ、あなたが「私ではない」と否定したところで、攻撃は止まらないはずです。私刑執行人たちは、あなたに一度も会うことなく、ツイートやFacebookの「魚拓」を証拠として採用します。

 そうなれば、警察に駆け込む以外の選択肢はもう残っていません。名誉を取り戻すための、長い戦いが始まるでしょう。・・・なんていう、ホラーのような話も現実に十分ありえます。

 匿名という仮面で自らを守り、正義感を抱きつつも発言責任から逃れようとする(書類送検されているように、実際には逃れられないのですが)彼らは、デマを発する主体にもなりえます。 「社会悪を裁く」という大義をもって活動するネット上の私刑執行人たちは、今後も無関係な人を傷つけ、自らを「犯罪者」に仕立て上げていくのでしょう。

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