ドイツ
ギリシャのために一生懸命お金を使っても一向に感謝されないドイツは、中国の反日運動に悩まされる日本と瓜二つ!?
国会前のシンタグマ広場に集まった群集〔PHOTO〕gettyimages

 この頃、金融危機とか、ギリシャ救済とか、EU団結のニュースが出るたびに、心は"うんざり"の5乗ぐらいになっているのがドイツ人だ。「もうそんなニュース聞きたくない!」という拒絶反応が顕著。事態の深刻さに怖気づき、この先あと何年、自分たちの税金がギリシャにつぎ込まれるのかと、ある人は絶望的に、ある人は攻撃的になる。

 そんなドイツ国民の目に飛び込んできたのが、アテネのデモの様子だ。いつものように、緊縮財政や、それを推し進めようとしているギリシャ政府に抗議するデモではなく、このたびは、反ドイツ、反メルケルのデモだ。

 きっかけは、10月9日のメルケル首相のギリシャ訪問。その前日の8日、アテネはすでに厳戒態勢だった。政府関係の建物が並ぶ地域は封鎖され、動員された警官の数、約7000人。これほど大掛かりな道路封鎖は、オリンピックの時でさえなかったという。すべて、メルケル氏を守るためだ。

 しかし、デモ隊はどんどん膨れ上がり、「メルケル、出ていけ!」と書いたプラカードや、ナチ親衛隊のユニフォーム、カギ十字の旗まで見える。EUの旗に火を点けているグループがいるかと思うと、「第4帝国ドイツ」と書かれたプラカードもある。いったい、メルケルとヒトラーに、何の関係があるというのだ!?

 茶の間でそれらを目の当たりにしたドイツ人は、いたく腹を立て、また、傷ついた。そして、そんなところに出向こうとしている首相に、多くの人が同情した。そもそもメルケル氏は、「ドイツはギリシャを支援している、あなたたちの苦労はよくわかる。絶対に見捨てない」というドイツ政府の意志をアピールするために行くのだ。

首相就任前後で態度を180度転換したサマラス氏

 ギリシャで混乱しているのは経済だけではない。まず政治が激しく混乱している。ここ3年間、ほとんど政治らしい政治など行われてこなかったと言ってもよい。今年5月の総選挙のあと、1ヵ月以上も組閣さえできなかったのは、私たちの記憶に新しい。

両国の友好と強力体制を強調したメルケル、サマラス両首相〔PHOTO〕gettyimages

 ギリシャの粉飾財政が露呈し、いつ破産してもおかしくない状況にあるという禍禍しい事実が明らかになったのは、2009年10月のことだ。首相パパンドレウ氏は、EUからの援助を受けるため、財政引き締め法案を通そうと必死だったが、当時の最大野党の党首サマラス氏は、国家主義的なスローガンを叫んで、それを阻止し続けた(そのサマラス氏が、何の因縁か、現在の首相)。そうこうするうちに内政はますます紛糾し、ギリシャ経済はさらに深く奈落へと落ちていった。

 よってEU首脳から見れば、サマラス氏こそ、ギリシャの借金政策を擁護し、軌道修正を遅らせた張本人なのである。ちなみに、04年から5年間、ギリシャの政権を握り、壊滅的な放漫経営に励んだのも、彼の政党「新民主主義党」であった。

 ところが今年6月、首相に就任し、現実と対峙したサマラス氏は、EUの援助を拒否すればギリシャの運命がどんな悲惨なことになるかがよくわかったらしい。すでに夏ごろには、今までと態度を180度転換したのである。

 10月9日、12時29分、メルケル首相の乗った空軍の飛行機がアテネに着陸した。赤いじゅうたんが敷かれ、迎えに出たのはサマラス氏本人。軍楽隊が国歌を奏で、歓迎の儀仗が行われた。最高に丁重な出迎えである。

 その日のアテネでは、前日と同じく、午前中から再びデモ隊が気勢を上げていた。メルケル首相が通る道筋には近づけない彼らは、近くのシンタグマ広場に集合した。その数5万。一方、サマラス、メルケル両首相の乗った車はひっそりと静まった官庁街を突っ走って、1時半にはサマラス氏の執務室に到着した(これらの情報は、第2テレビがホームページで分刻みにフォローしていた)。

 デモ隊の秩序は午前中のうちは保たれたが、メルケル到着後に数百人が暴徒化。石やガラス瓶が飛び、あちこちで火の手が上がった。そして、重装備の機動隊ともみ合った末、催涙ガスが投入され、逮捕者も出た。

 会談が終わると、メルケル、サマラス両首相は共同記者会見を開き、両国の友好と協力体制を強調した。メルケル氏は、ギリシャのこれまでの努力を称賛し、さらにEUの援助を得るためには宿題をちゃんとやるよう優しく引導を渡し、破綻しているギリシャの医療制度を支援するための3,000万ユーロを置き土産に、その日のうちにアテネを後にした。

 メルケル首相のギリシャ訪問で一番得をしたのはサマラス首相だろう。がたがたの連立政権で足元きわめて不如意だったが、①ドイツはギリシャがユーロ国の一員として留まることを希望している、②ドイツはギリシャをあくまでも支援する、というメルケル首相の言質をとったおかげで、政府内での立場は少なくとも一時的には強くなるはずだ。

 ギリシャが立ち直るためには、ドイツとの関係を良好にしておかなければいけないというのが、現在の彼の確信。しかし、国民がサマラス氏と意見を一にするかどうかは、また別問題である。

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