特集ビジネス最前線 今こそ「非常識」を形にせよ
不景気下のヒット商品「発想のヒント」

〝よせてあげる〟の真逆にも鉱脈があった
小さく見せるブラ ワコール

「ワイヤーを工夫することで、バストトップが前に出ないようにできました」と、広報部の春名のぞみさん〔PHOTO〕本多治季(以下同)

 '92年に、「よせてあげて、もっとあげる」のキャッチフレーズで〝大きく見えるブラジャー〟の大ヒットを飛ばしたワコールが、真逆の発想でまたまた大ヒットを飛ばしている。その名もズバリ、「小さく見せるブラ」。今回は、胸が大きく見えないようにするブラである。

 巨乳をわざわざ小さく見せる必要があるのか―。『フライデー』にとっては衝撃的な発想だが、このブラ、 '10 年の発売から2年半で22万枚超という驚異的な売り上げを記録。今年6月には、ネットで寄せられたユーザーからの要望に応え、「アウターに透けにくい」4色からなる新デザインにバージョンアップし、売り上げをさらに加速させているのだ。

「ネット通販に限定したことでユーザーの意見を集約できたのも、ヒットの大きな要因だと思います。開発がスタートした '09 年当時、百貨店や専門店など従来の販売チャンネルの成熟化からネットに注目した当社では、ネット専用の商品開発を急いでいました。そんな中で、女性デザイナーが自らのブラ体験から提案したのがこのコンセプトだったのです」

担当の小田聖也さん。大きな胸を嫌がる女性層の心をキャッチした

 商品開発に携わった商品営業部の小田聖也さん(33)は、当時をこう振り返る。女性デザイナーが提案したのは、「胸が大きいと、太って見えてしまうという悩みを持つ女性が多い」というものだった。早速、同社で20~40代の女性を対象にアンケートを実施したところ、「バストをコンパクトに見せたい」との回答が10・7%もあったのだ。

「1割と言えば少数派に見えるかもしれませんが、深刻な悩みを抱える人がいる以上、それに応えるのはトップメーカーの義務と考えました。しかも、従来手つかずの市場だけに、そこにフィットする商品を提供すればビジネス的にも成功する可能性も高いと考えたのです」

 どうやって大きな胸を小さく見せるのか。第一はパッドなどを無くして生地を極限まで薄くする。次に、横に広がると大きく見えるので、サイドを押さえて広がりを防ぐ。さらに横を押さえるとバストが突出気味になり、大きさが目立ってしまうので、ワイヤーを通常より広めに作ることで解消したと言う。

「さらしのように押さえると窮屈でつけ心地が悪くなる。相反するものを同時に実現するのが一番の難関でした」