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音を上げるのはどっちだ——究極のチキンレース 日中「経済断交」目前に迫った最も現実的な危機

「日本から中国に製品などを輸出する場合、税関の検査を受けなければいけません。いままでは製品の何%かを抜き取って検査するのが通常でしたが、ここへきて全量検査されるケースが出ています。すべての商品をコンテナから取り出して検査、それをまた梱包してつめなおすということが行われるため、製品が通関で足止めを食らっています。

 ジェトロでは経済産業省の指示で実態を調査していますが、『いままでは1日もかからなかったのに、2~3日も検査に時間がかかった』などという事例が出てきています。電子部品などの工業製品の場合、工場に届くのが遅れることで生産を一時ストップしなければいけない。そうなれば納品に遅れが出て違約金の支払いを迫られるケースも出てくるでしょう」(ジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センター長の大西康雄氏)

 尖閣問題を契機に沸騰する日中関係が、ついに、経済戦争に発展する可能性が出てきた。国内でモノが売れない日本企業にとって、消費大国である中国市場はいまや「生命線」だが、それを見透かしたように中国側が揺さぶりをかけ始めているのだ。

最初の攻撃は始まっている

 "通関規制"は中国側の攻撃第1弾。もちろん中国政府は「税関に指示した」とは明言しないが、タイミングから見てもこれが政府当局主導の経済制裁であることは間違いない。中国駐在経験の長い日系証券会社中国調査部門アナリストもこう指摘する。

「日中、日台の企業間の取引には支障は出ておらず、日本企業から日本企業への貨物だけ通関検査が厳しくなっているようなので、明らかに作為的です。最近は中国人の日本への旅行がキャンセルラッシュになっていますが、これも中国政府当局による措置と見ていいでしょう。私の友人の中国人が東京ディズニーランドに遊びに来る予定でしたが、『突然、旅行会社のツアー自体が中止になり行けなくなった』と言っていました。要するに個人が反日感情から旅行を取りやめているのではなく、旅行会社を統括している中国国家旅遊局が、旅行会社に日本ツアーのキャンセルを通達しているのが実態です」

 日本企業にとってきついのは、こうした措置に加えて「民間版」経済制裁というべき反日行動が同時並行で起きていることにある。すでに報じられているだけでも、「トヨタの現地販売所が放火で全焼した」「パナソニックの現地工場が破壊された」「小売店やネット通販が日本製品の取り扱いを中止した」といった破壊活動・略奪行為・不買運動などが連鎖的に多発しているのだ。

"ダブルパンチ"を浴びせられた格好の日本企業からは、さっそく悲鳴が漏れる。

「中国で販売する団体予約のキャンセルが発生しており、その数は9月21日までに約2万7000席になっています。また現地採用の中国人が空港で罵倒される、現地駐在や帯同家族が嫌がらせ(タクシー乗車拒否や降車時に領収書を投げつけられるなど)を受けた事例もあります」(全日本空輸)

「9月18~21日の間、一部工場で稼働停止しました。また9月26~29日の間、天津、広州の工場を非稼働とします。具体的な台数などはまだ把握できていませんが、(不買運動による)影響が出ていることは認識しています」(トヨタ自動車)

「一部のチェーン・店舗で日系商品の取り扱いが中止となり、当社製品にもその影響が出ています」(サントリーホールディングス)

 こうした事態の打開を図るため、財界トップ・経団連の米倉弘昌会長らが訪中、唐家璇前国務委員や中国の経済団体幹部らと相次いで会談したが"冷経状態"の雪解けとはならなかった。もはや状況が改善する見込みすらなく、中国側はさらに第2弾、第3弾の攻撃を打ってくる公算が大となっている。

「次に出てくる経済制裁的な処置として、たとえば補助金制度からの締め出しが考えられます。中国には日本のエコポイント制度やエコカー補助金のような補助金制度があり、対象リストから日本製品が排除される可能性がある。ほかにも中国で事業所を出すには政府の許可が必要ですが、その許認可をわざと遅らせるという手法も考えられます。

 きついのは公共事業の入札妨害でしょう。巨大なカネが動く鉄道、発電所などのインフラ建設から締め出されれば、業績への影響は甚大なものになってしまいます」(大手シンクタンクの中国担当研究員)

 日本にとって中国は最大の輸出国であり、その額は年間約12兆5000億円にものぼる。中国に進出している日系企業は2万社を超え、直接投資の額(今年1~7月)も50億ドルほどと地域別でトップ。まさに「主戦場」であり、ここから締め出されればバタバタと日本企業が倒れるシナリオも現実味を帯びてくる。前出・アナリストもこう言う。

「ここへきて日本企業が見本市から排除される事態も起きています。9月25日に開幕した国際見本市『西部国際博覧会』では開催側から通達を受け、日系企業が出展を断念せざるをえなかった。昨年は世界から3000社以上が参加、3兆円にものぼる投資契約が成立している中国最大級の見本市だけに、除外されるハンディキャップは大きい。オセロが次々とひっくり返るように、韓国や欧米系企業にシェアを奪われる危険性も出てきます」

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