企業・経営
電波行政の秩序破りに苛立つ総務省。イー・アクセス買収で2社分のプラチナバンドを手にしたソフトバンクの成算とは
〔PHOTO〕gettyimages

 「法治国家ですから法律に則ってということについて、確認をさせていただく」---。

 ソフトバンクによるイー・アクセス買収の検証をお約束した本コラムの前編が掲載された10月2日。前日発足の野田佳彦第3次改造内閣で総務大臣に就いたばかりの樽床伸二氏は定例記者会見で、事務方が作成した想定問答を何気なく読み上げた。

 マスメディアは、大臣発言の意味するところを理解できなかったのだろう。ほとんど報じられなかったが、実は、この発言ほど、今回のM&A(企業の合併・買収)に対する総務省の苛立ちを象徴しているものはない。

 というのは、孫社長は、総務省の裁量で周波数を無償で割り当てる比較審査方式を求めて、それを後押し。3.9世代携帯電話用のプラチナバンドと呼ばれる周波数を真っ先に獲得した経緯がある。ところが、その配分が完了した途端、他社分の周波数まで掌中に収めようとして、イー・アクセスを会社ごと金銭で買収する戦略に転換した。 

 3.9世代用の周波数は当初、オークション(入札)方式で割り当てられて、巨額の税外収入をもたらすものと期待されていた。その入札を先送りして、携帯4社に平等に周波数を割り当て規制下の競争を図ろうとした総務省は、その顔に泥を塗られた格好だ。

 そもそも、周波数は国民共有の公共の財産だ。総務省が手をこまねいて黙認するのか、それとも何らかの是正策を打ち出すことができるのか。我々納税者は、注意深く成り行きを見守る必要がありそうだ。

利権へのメスは容易に入りそうにない

 携帯電話に周波数を割り当てる方式は大きく分けて2つある。これまで日本が採用してきた比較審査方式(ビューティコンテスト方式)と、ほとんどの先進国で主流となっているオークション方式だ。

 筆者らがメンバーを務めた総務省の「光の道のタスクフォース」(通称、正式名称は「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」)の合同部会が2010年11月に、段階的なものであっても、3.9世代携帯電話用の周波数の割り当てから導入するように求める報告をまとめたにもかかわらず、総務省はあの手この手を使って、この方針を黙殺した。

 一般会計予算の半分近くを国債に依存し消費増税が必至と見られていた時期に、1兆円前後の税外収入を確保できると見込まれ、しかも、米英仏をはじめとして当時すでにOECD加盟の先進30ヵ国のうち8割に当たる24ヵ国が導入していた電波オークション方式を、総務官僚が先送りした最大の理由は「(それまで700~900㎒帯のプラチナバンドの認可を受けていない)ソフトバンクの番に、オークションなど導入したら(ソフトバンクがうるさくて)もたない」という事無かれ意識だった。

 加えて、周波数の配分という利権を温存しようという意図も露骨だった。

 実際のところ、審査もしない段階で、「次はソフトバンクの番」などということを決めていること自体が、とっくに比較審査方式が形骸化しており、まともな「審査」などしておらず、はじめから結論の見えたある種の談合に過ぎないものであることは、浮き彫りになっていた。結局のところ比較審査方式は、国家による壮大な利益供与を尤もらしく見せるためのショーに過ぎなかったのだ。舞台裏で総務官僚らが垣間見せる心中の意識は、そのことを露わにしていた。

 実は、それゆえ、筆者らのタスクフォースは、こうした不透明な規制や官民の癒着を是正する狙いをあわせて、オークションの導入を求めたのだった。決して、単純な国庫の税外収入の拡大策ではなかったのだ。

 しかし、総務省は、それ以前から議論に何年も費やし、その間中、「時間が足りない」という屁理屈を繰り返して、オークションの実施をプラチナバンド周波数の割り当ての次に先送りした。その一方で、総務省の意向を受けて、自民党はすでに、オークション導入に強く反対しはじめており、今後も、オークションの実施の先送りが繰り返される可能性は大きい。利権へのメスは容易に入りそうにないのである。

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