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大物OBが徹底討論中田行彦×岩瀬哲雄
ついに最終ラウンドへシャープは消えるのか

〔PHOTO〕gettyimages

 1万人超の人員削減、海外工場の売却・・・・・・銀行団に示した再建策はまるでリストラの見本市。縮み続ける会社はナメクジのように、数粒の塩でも溶けて消える。生き残れるか。OBが本音をぶつけ合った。

「管理野球」の失敗

岩瀬 私は昭和48年に入社し、電卓をやっていた事務機事業部に配属されたんですが、そこでやらされたのはアンチスキッド制御システム、いまでいうABSブレーキの開発なんです。

中田 自動車の急ブレーキを踏んでもスリップしないというあれですか? 事務機事業部で?

岩瀬 ええ。あるとき上司に聞いたんです。「なぜ電卓技術を開発する部署でこんなものをやるんですか」と。そうしたら、「もう電卓は先が見えている。だから次の事業をしないといかんのだ」と。

 当時はまだ電卓事業が花形のころ。恐らく詳細な技術開発の状況を上には報告していなくて、部長の責任でやらせていたんですね。だから当然予算は少ないけれど、そら任された研究者は嬉しくなりますよ。私も40度の熱があって医者から止められても、毎日日付が変わる時間まで残業し、開発に没頭していました。

中田 私は岩瀬さんより2年早く入社していますが、当時、中央研究所に勤務していました。そのころシャープは国内電機メーカーで11~12位くらいでしたが、研究開発には手を抜かなかった。

 というのも当時は技術本部には液晶ディスプレイのプロジェクトチームがありましたが、それとは別に中央研究所で無機ELディスプレイの開発もしていて、私もその一員でした。シャープが最初に作った薄型ディスプレイは、われわれの無機ELだったんです。後にこれは技術的に駆逐されてしまいますが、無機ELと液晶という二つの研究が自由に競争できるような余裕が当時はありました。

岩瀬 でも、ある時代から研究開発の状況をすべて本社に報告しなければならなくなった。そうするとどうしても管理野球になっちゃう。つまり、売れるものしかやらなくなり、次の時代のメシのタネがなくなってしまったと思うんです。

中田 もともと日本企業は欧米の企業に比べて長期的視野で研究開発に取り組める、と言われてきた。アメリカの経営者は利益が出ないとすぐ株主からクビにされる。だけど日本はそうじゃない、と。でもいまは日本企業にその余裕はない。そこで苦しくてもシャープには、技術者が創造性を発揮できる方法を考えていってもらいたいんですが。

岩瀬 その点、いまのシャープを見ていて私が心配しているのは、次々と追加のリストラをしなければならなくなっていること。経営陣は、人を減らすことと資金繰りばかりに気を取られている気がしてならない。

中田 私もそこは危惧しています。

岩瀬 人を削減するのは仕方ないと思うけれど、それよりもまず企業としてのビジョンを持つことが必要ですよね。「1年後にはこうなります。10年後にはこういう事業を中核にします」と。

 そのときに、「申し訳ないけれど今回こういう方には辞めてもらいたい」と従業員に理解を求めるというのならまだ分かる。だけどいまは、「カネがないから辞めてくれ」という姿勢でしょう。研究開発費を削るにしても、同時に「これからはこの分野には力を入れる、カネも回す」と明示することが大切です。いまのままでは技術者の士気もなにもあったもんじゃない。

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