[アイランドリーグ]
愛媛・河原純一<後編>「野球を嫌いになって現役を辞めたい」

 

 難しい育成と勝利のバランス

香川とのリーグチャンピオンシップ第2戦(9月30日)は延長戦で失点し、負け投手になった。

――NPBとアイランドリーグの違いはキャッチャーのリード面にもあると感じます。NPBなら中日の谷繁元信選手のように、信頼してリードを任せられるキャッチャーがいます。しかし、アイランドリーグは基本は若いキャッチャーですから、経験不足は否めない。となると配球に関して河原投手が組み立てていく部分も多いのではないでしょうか。

河原: 確かに単に僕だけが結果を残すことだけ考えれば、全部、僕がリードしたほうがいい。でも、それでは若いキャッチャーの成長につながりません。やはりバッターを抑えるのはバッテリーの共同作業だから、彼らがどんな考えを持ってリードをしているのかを僕も知りたいんです。何でもかんでも僕が主導にならないように気をつけていますね。

――ダイエー時代の工藤公康さんが城島健司選手(現阪神)を育てるために、打たれると思っていても、わざとリード通りに投げて、なぜ、その配球がダメなのかを気づかせたというエピソードがあります。河原投手も「これは打たれるかも」と思いながら、サインに首を振らずに投げることもあると?

河原: これは難しい問題ですね。キャッチャーを育てるためと割り切れば、彼らのサインに従って投げればいい。でも、実際に「え? それはどうかな?」と思っているのに、その通りに投げて、打たれて負けてしまったら、さすがにチームとしてはマズイ。かと言って全部、首を振れば、キャッチャーにとって勉強にはならないというジレンマがあります。

――サインに首を振られた意味をキャッチャーが分かってくれれば一番いいのでしょうが……。

河原: それはその通り。ただ、首を振られることが当たり前になると、どうしても自分で深く考えなくなってしまう。極端な話、適当にサイン出したって僕が修正すればOKになる。これは彼らにとって本当の勉強にはならないと思うんです。

――育成と勝利のバランスを考えなくてはいけない点も独立リーグならではの難しさでしょうね。

河原: だから、若いキャッチャーとコミュニケーションをとりながら、気づいたことはその都度、言っていく方法で進めていくしかないでしょうね。

――僭越ですが、河原投手のここまでの野球人生を一言で表現すると“諦めない”というキーワードが浮かびあがる気がします。1年間の浪人も、このリーグでの経験も、簡単に“諦めない”ことで新たなステージに到達しているように感じるんです。

河原: 諦めないことがいいのかは分からないけど(苦笑)、確かにアマチュア時代からそういう面はあるかもしれないですね。高校だって甲子園に出るような強豪じゃなかった(川崎北高)し、(駒澤)大学時代だって最初は将来を約束されていたわけではなかったから。それでも諦めずに何とか頑張ってきたからこそ今があるとは思っています。

――このリーグも上のレベルでプレーしたい夢を諦めきれずに四国に来た選手たちの集まりです。その意味では河原投手の“諦めない”姿から得るものは多いと感じます。

河原: うーん。でも、厳しい言い方をすれば、若い選手たちが40歳間近の僕を見て、刺激を受けているようではダメですね。僕の感覚から言わせてもらうと、彼らは諦めきれないというほど野球をまだやっていないですよ。

――上のレベルに行けないのは、単純に野球に対する真剣度が足りないからだと?

河原: はっきり言えば、そうなりますね。もっともっと、やらなきゃ。僕だって20代前半の頃は死ぬほど野球をやらされてきましたよ。自発的にやっていたわけではないとはいえ、少なくとも今のリーグの選手たちよりも野球に向き合う時間は長かった。NPBで活躍している選手たちも少なからず、僕と同じような過ごし方をしてきたでしょう。ところが、このリーグの選手たちには残念ながらそれがない。この時点でNPBの選手とは差をつけられているわけですよ。その違いを深刻に受け止めて野球に取り組まないと、結局はどこかで諦めざるを得なくなると思います。