内閣改造人事にみる勝前財務事務次官の影響力。財務省が描く「安定した政治と決められる政治」のためのシナリオとは
野田第3次改造内閣〔PHOTO〕gettyimages

 民主、自民両党の新執行部が誕生し、野田佳彦首相は第3次改造内閣を立ち上げたものの、秋の臨時国会召集のメドが立たないばかりか、野田官邸が党首会談の日程も一向に決めないため安倍晋三自民党総裁は苛立ちを示している。

 そうこうしているうちに、案の定、新閣僚の一人、田中慶秋法相が外国人経営者から政治献金を受けていた事実が発覚した。09年9月にスタートした鳩山由紀夫政権以降、民主党政権は閣僚候補の「身体検査」を事実上実施してこなかったツケが、ここに来てまた回ってきたのである。田中法相に次ぐ「第2のスキャンダル予備軍」の存在が取り沙汰されている今、野田首相には「近いうち」の衆院解散・総選挙など想像の外であるというのが通り相場である。

 永田町では、解散先送り論者の輿石東・民主党幹事長が今回の内閣改造・党役員人事・首相補佐官人選を通じてますます影響力を強めたとの見方が支配的である。幹事長再任を果たした輿石氏が、トピックメーカーの田中真紀子元外相を文部科学相に推挙、首相周りの重要ポストである官房副長官(政務担当)と首相補佐官に側近の芝一博、川上義弘両参院議員をそれぞれ官邸に押し込んだのは事実である。

 細野豪志前環境・原発事故担当相が野田首相の強い拘りで政調会長に抜擢されたことを貴貨として、煙たい存在の仙谷由人政調会長代行を副代表に棚上げ、細野氏が社会保障政策通の細川律夫元厚生労働相の同代行起用を求めたところ、すかさず馬淵澄夫元国土交通相を同代理に据えた。

 こうしたことから、『読売新聞』(10月3日付朝刊)の見出しにある「輿石氏の影響力拡大化か---首相補佐官入れ替え」といった受け止め方が民主党内外で定着した。これはこれで正しい。が、看過すべきではないのは財務省である。それは、9月21日付で同省顧問を退いた勝栄二郎前財務事務次官の存在である。

勝氏に絶大な信頼を寄せる野田首相

 先ずは財務相人事。輿石氏が城島光力前国対委員長の官房長官起用を野田首相に進言していたのは間違いない。だが、野田氏は城島氏の財務相起用を譲らなかった。筆者を含め多くの永田町ウォッチャーは、岡田克也副総理の兼務か、本人が望んでいた前原誠司前政調会長(現国家戦略担当相)のいずれかと見ていた。ところが、サプライズの城島財務相誕生となった。

 同氏は1日の就任会見で「全く予想していなかったポスト」と語ってみせたが、実は「城島財務相」は内閣改造のほぼ1週間前に確定していたフシが濃厚なのだ。勝・財務省が内々に野田首相に対して城島氏の起用を強く推していたという信頼すべき情報がある。

 首相補佐官人選では5人のうち4人を入れ替えたのだが、野田首相の最側近とされた手塚仁雄氏が外れ、先述の川上氏を含む4人の衆参院議員が官邸入りした。注目すべきはそのうちの2人、すなわち大串博志衆院議員(当選2回・89年旧大蔵省入省)と北神圭朗衆院議員(同・92年)である。

 主計畑の大串氏、主税畑の北神氏、きちんとバランスを考えて2人の財務省OBが官邸に送り込まれているのである。野田氏が財務副大臣、財務相を経て、そして首相に登りつめる過程で勝氏も主計局長、事務次官とステップアップしてきた。野田氏が勝氏に絶大な信頼を寄せているのは周知の通りだ。

 次に、焦点の衆院解散の時期は?である。野田首相が次期衆院選での民主党大敗の責任を一切背負って首相・代表の座を退く覚悟であることも知れるところだ。今秋の解散を来年1月召集の通常国会序盤、あるいは4月の13年度予算の成立後に先送りしたところで総選挙敗北は回避できない。せいぜい負け幅が10~30議席違うだけだ。

 それこそ12月のロシア訪問でプーチン大統領から北方領土4島返還の基本合意を取り付けるとか、北朝鮮との交渉が飛躍的に進展を見て拉致被害者の帰国が実現するなどの「大サプライズ」があれば、現有の243議席がマイナス100で済むことがあるかも知れない。だが、どちらも現実味に欠ける。

 であれば、開き直って、それこそ自民、公明両党が求める「年内解散」に打って出るという選択肢を真剣に検討することもあるのではないか。そして恐らく、財務省が描く「安定した政治と決められる政治」のためのシナリオ、すなわち比較第1党になる自民党の安倍総裁を首班とする次期政権に公明党、そして衆院選大敗による分裂後の民主党B(野田、前原グループなど現主流派)を加えた「自民・公明・民主B」政権での与党の座維持を目指す---これが野田首相のウルトラCではないか。

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