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中国の狙いは「資源の宝庫・沖ノ鳥島」強奪だ
次期国家主席に就任すると見られる習近平副主席。超保守派とされ、領土問題では強硬姿勢が予想される〔PHOTO〕アフロ(以下同)

「今なお、監視船の領海侵入という中国からのプレッシャーは続いていますが、尖閣諸島だけを見ていてはダメです。長期的に見れば、中国の最終的な狙いは西太平洋にあります。つまり、南シナ海、東シナ海の次に中国は、日本最南端の島、沖ノ鳥島を獲りに来るでしょう」

 元防衛庁防衛研究所研究室長の平松茂雄氏は、こう警告する。

 中国で荒れ狂った「反日デモ」は、当局の規制強化で鎮静化した。が、尖閣諸島付近には連日、中国の海洋監視船が姿を現し、示威行動を繰り返している。9月24日には中国の監視船4隻が領海侵入し、翌25日には台湾の漁船約40隻が、自国の監視船を伴って押し寄せた。台湾船とは海上保安庁の巡視船が放水するなど小競り合いを起こした。24日、日本から河相周夫外務事務次官が訪中し、翌日次官級協議がもたれた。が、中国側は矛を収める気はなく、緊張が高まる一方だ。

 領土問題に詳しい東海大学海洋学部教授・山田吉彦氏が言う。

「中国の方針は、九州から沖縄、台湾、フィリピン、マレーシアへと続くライン〝第一列島線〟を確保すること。要するに南シナ海と東シナ海を自国の海にすることです。鄧小平時代の'82年に、2010年までに第一列島線を掌握する計画を立てました。ところが、南シナ海はほぼメドがついたが、東シナ海はまったく手つかず。そこで戦略を組み直し、'10年から急遽、尖閣諸島に漁船が大挙して押し寄せるようになったのです」

日本最南端に位置する沖ノ鳥島。中国は、岩礁に過ぎず排他的経済水域の基点条件を満たさないと主張する

 今回の中国の暴挙のきっかけは、日本による尖閣の国有化だったが、それは口実に過ぎず、鄧小平時代からの長期的な戦略に基づいた計画的行動だというのだ。そして、その先にあるのが西太平洋。中国は何の目的で沖ノ鳥島を狙うのか。前出・平松氏が説明する。

「世界は海の時代に入りました。レアアース、天然ガスの一種であるメタンハイドレートなど新資源が海底に眠っていることはここ数年各国で確認されている。'70年代には南沙諸島近海の豊富な石油埋蔵量が指摘されていましたが、当時はまだ中国も経済力がなかった。しかし、世界第2位の経済大国となった今、周辺海域の覇権獲りに一気に乗り出した。まったく油断できない」

 沖ノ鳥島は、東京から約1700km南の西太平洋上に浮かぶ環礁。'31年に東京府小笠原支庁へ編入され、 '68 年の小笠原返還協定によって米国から返還された。満潮時はほとんど水没してしまうため、日本がコンクリートの護岸を造った。日本の排他的経済水域を確保するために死守しなければならない生命線だが、北東約2000kmに位置する南鳥島を含めた近海に眠る資源が図抜けている。

「東大の加藤泰浩教授らの研究チームの調査では、南鳥島海域だけでもレアアースの埋蔵量は約680万t。日本国内の需要で言えば、200年分以上と推定されています。また沖ノ鳥島近海にはそれ以上の埋蔵量が期待されているのです」(経済ジャーナリスト)

100年分の天然ガスが眠る海

 メタンハイドレートについては、日本近海だけでも国内の天然ガスの消費量にして約100年分が眠っていることが確認されている。圧倒的な経済力を誇る中国が触手を伸ばしてくるのも否定はできまい。前出・平松氏はこうも指摘する。

「中国共産党は2021年に創立100周年を迎えますが、それまでに台湾を自治州として中国に取り込む予定です。そうなれば、尖閣が獲れなくても太平洋に出られる。つまり、数年後には尖閣を越えて沖ノ鳥島に一気に向かう可能性は高い。日本政府はその点にも留意すべきです」

フィリピンが領有権を主張していた南沙諸島沖に中国が建設した監視基地。実効支配を進める際の常套手段
西沙諸島でも最大の永興島'88年に中国が空港を作り、実効支配。今年7月、三沙市を設置し領有を宣言

 中国にはベトナムやフィリピンなど周辺諸国の抗議を無視して、他国の領有地域を無理矢理自国の領土にした「前科」がある。'70年代から南シナ海にジワジワと実効支配を進め始めた中国は今年7月、ベトナムが領有を主張する西沙、フィリピン海域にある南沙、中沙の3諸島をひとまとめにして「三沙市」という新自治体を作り上げてしまったのだ。

 中国が他国の領土を「実効支配」する手口について、産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏が解説する。

「政府は漁民に対して補助金を出し、〝先兵隊〟として実効支配を狙うエリアに漁に行くように手配します。日本円にして30万~40万円で、漁民はそれだけで採算がとれる。中国はそうして漁業権を主張し、漁場周辺のパトロールを始める。そうして実効支配しているという既成事実を作っていくわけです」

 '95年、中国は南沙諸島のミスチーフ環礁に監視櫓(小屋)を建設。実効支配の前線基地とし、周辺諸島を一つずつ潰していった。思えば、尖閣もまったく同じパターンだ。日本が実効支配しているにもかかわらず、漁船が姿を見せ始め監視船が勝手にパトロールを始める。そして自分の領土だと主張する。しかも、領海侵犯に民間人を使うことで、アメリカに軍事介入する口実を与えない。したたかな計算に裏打ちされた周到な作戦なのだ。

中国がゴリ押しで作った「三沙市」は、西沙、南沙、中沙の3諸島からなる自治体だ。行政施設は西沙にある

 中国では10月に第18回中国共産党大会が予定されており、胡錦濤主席から習近平副主席に権力委譲が行われると見られる。習氏は反日強硬派と目される。『習近平の正体』(筆名・茅沢勤)の著書があるジャーナリストの相馬勝氏が言う。

「胡錦濤国家主席は反日の言動をしなかった。日中関係に非常に気をつかっていた。温家宝首相も度々来日しています。しかし、習氏の支持基盤は軍です。軍で多数を占めるのが太子党と呼ばれる高級幹部の子弟たちのグループ。彼を支える軍は絶対に領土問題で妥協することはない。習氏が最高指導者になった場合、政治基盤の軍に配慮せざるを得ない。強硬路線一本槍になるものと見ています」

 日本の政治家が政局に明け暮れているスキに、膝元まで中国の〝実効支配〟が及びかねないのである。

「フライデー」2012年10月12日号より

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