ドイツ
最大野党SPDがメルケル首相の対抗馬にシュタインブリュック氏を指名! ドイツ国民はこの押し出しの強い男をどう評価するか 
首相候補に指名されSPD本部での会見に臨んだシュタインブリュック氏〔PHOTO〕gettyimages

 SPD(社民党)が、ようやくメルケル首相の対抗馬を出してきた。ぺア・シュタインブリュック(Peer Steinbrück)。05年から09年、CDU(キリスト教民主同盟)がSPDと大連立を組んでいたあいだ、メルケル首相の下で財務相を務めた人物だ。財務のベテランという声もあるが、評価は定まっていない。

 ハンブルクの裕福な家庭の出身だが、学校時代はかなりの問題児だったようで、転校と落第を繰り返した。しかし、その後、大化けして州知事、そして、連邦大臣にまでなる。ただ、財務大臣時代は、財相サミットを家族旅行のために欠席したり、連邦議会の議員になってからも、副業のために大事な審議をさぼったり、問題児の素質がすべて消えたわけではない。高額の講演も精力的にこなすので、すでに長らく、全議員の中で副収入の最高額を誇っている。

 ドイツは来年の秋が総選挙で、今、メルケル対シュタインブリュックの首相争いの火蓋が切られた。戦後、必ずそうであったように、2大政党CDUとSPDの一騎打ちだ。CDUの首相候補はメルケル続投ということで前々から決まっていたが、SPDはなかなか決まらなかった。シュタインブリュックを含め、3人の男が長いあいだ三つ巴になったまま譲ろうとしなかったからだ。

 1人は09年の総選挙でメルケルの対抗馬だったシュタインマイヤー。ただ、一度メルケルに敗れた候補者をもう一度出しても、二番煎じの感は免れない。もう1人は現在のSPD党主、ガブリエルだが、アンケートで、国民の間でまったく人気がないことがわかっており、これもダメ。結局、メルケルに勝てそうなのはシュタインブリュックとなったわけだが、ここ半年以上、党内ではかなりの権力闘争があったと思われる。SPDは、はっきり言って人材不足だ。

ドイツの与党は一瞬たりとも気が抜けない

 ドイツの政治のよいところは、2大政党が存在することだと思っている。といっても、アメリカほど両党の主張の中身に差はない。今やどちらも中道で、そうでなくては、おそらく国民の権利意識の強いドイツでは生き延びられない仕組みになっている。民主主義の進んだ国では、極端なタカ派や左派には十分な居場所がない。

 ドイツでは戦後から現在まで、与党として適当に両党が入れ替わりながら、今の国家が形成された。戦後まず、とにかく早く世界の信用を取り戻して西側諸国の仲間入りを果たそうと、懸命に民主主義国家を作る努力をしたのは、CDUのアデナウアー首相。SPDのブラント政権になると、それまで手が回らなかった東欧諸国との和解が始まった。70年のポーランドとの和解は、ブラント首相の功績だ。

 そのあと、シュミット首相のとき、SPDは行き過ぎた福祉政策で行き詰まり、1982年、CDUのコール政権が始まる。ドイツ統一を果たしたコール政権は、なんと16年も続くが、最終的にそのドイツ統一のせいで力を失い、1998年、SPDのシュレーダー政権にとって代わられた。そして、05年からのメルケル政権は周知のとおり。09年まではSPDとの大連立、それ以後はSPD抜きである。だから今SPDは、今度こそ自分たちの番だと躍起になっている。

 2大政党が存在する利点は、常に強い野党があることだ。一定の支持者を持つ強い野党が、常にやいのやいのと与党の批判をするので、国民はそれに刺激され、アンテナを高くし、情報を十分に取り込み、覚醒している。ごまかしやら欺瞞は、容認されにくい。癒着や汚職も起こりにくい。日本のように、「どうせ何も変わらない」とは、ドイツの有権者は思っていない。

 その証拠に、覚醒している国民がその気になれば、「今度はこっちにやらせてみよう」と、次の選挙であっという間に政権はひっくり返る。だから、与党は一瞬たりとも気が抜けない。ドイツの野党の声は犬の遠吠えではなく、彼らはいつでも政権を担当する実力を備えているのである。

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