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日本企業と経済・金融を知るプロが緊急集合 危篤状態の企業 シャープに明日はあるのか
特別座談会 磯山友幸(経済ジャーナリスト)中空麻奈(BNPパリバ証券投資調査本部長)長田貴仁(経営学者・ジャーナリスト)
シャープの奥田隆司社長〔PHOTO〕gettyimages

 生ぬるいリストラに、進展しない台湾企業との提携交渉。頼みの液晶も売れず、ここへきて資金繰り懸念が浮上している。創業100周年に直面する破綻危機。回避できるのか、突然死もあるのか。

液晶批判はタブーだった

長田 シャープは液晶事業で10年は食べられると思っていたんです。というのは町田(勝彦・相談役)さんが、片山(幹雄・会長)さんを後任社長に指名した2007年に、「少なくとも10年はやってもらいたい」と言っていましたから。それが5年も経たずに状況は一変、いまでは経営難に直面しているわけです。

磯山 おっしゃる通りです。シャープは「世界の亀山モデル」と賞賛された自らの技術力に慢心しすぎました。そもそもシャープのテレビが売れたのは、技術力が優れているからというより、ブラウン管から液晶に市場がガラリと変わるという時代の変化の波の影響が大きかった。つまり、あれほどの時代はもう来ないというほど買い替え需要があった中で、シャープが自分の実力だけで売れていると過信してしまったんです。

中空 デジタル製品って怖いんですよ。今年になって破綻した半導体大手エルピーダメモリの坂本(幸雄・社長)さんが言っていましたけど、「半導体を1個作っても、おにぎり1個のマージン(利鞘)も取れないんだ」と。シャープも同じで、液晶事業に過剰投資をしていたらマージンが猛スピードで落ちてしまって、こんなことになってしまった。

磯山 それにしてもシャープの経営陣は、どうしてこんなに液晶にこだわってしまったのでしょうか。

長田 かつて私が町田さんにインタビューしたとき、彼がこう言っていました。町田さんが若手のセールスマンだった時代、量販店の社員に「お宅のテレビのブラウン管は日立製なんでしょ」と言われて、これが癪に障ったと。

中空 基幹部品を自社で作れていないことをバカにされたわけですね。

長田 そう。つまり、基幹部品を作っていないと一流企業だと認められないという想いが、町田さんの頭にはずっとあったのではないでしょうか。それにシャープには、ラジオ、電子レンジ、電卓など国産第一号を作るのに、すべて松下電器(現・パナソニック)に真似されて売り上げを持っていかれた歴史がある。「液晶といえばシャープ」と言われてやっと一流企業の仲間入りができると思って、突っ走ってしまった面があるのかもしれません。

磯山 シャープの上層部が液晶不振の実態をきちんと把握していなかったのではとも思うんです。というのは先日、ある経営者と話していた時、『週刊ダイヤモンド』のシャープ特集記事について、「やばいよね」という話になりまして。

長田 どういうことでしょうか。

磯山 その特集記事の中に、(大型液晶パネルを作るシャープの最新鋭工場である)堺工場の採算性をよく見せるために、シャープが内部取引をしていたのではないかというくだりがあります。つまり、堺工場が赤字になると減損処理をしなければいけないので、それを避けるために、上乗せした価格で内部取引する〝操作〟をやっていたのではないかと。

 その経営者は「あれをやられたら経営の上はわからない」と言っていました。つまり、トップまで工場の現状が伝わっていなかったという事態はありえるし、だからこそ損失処理のタイミングがこれほど遅れてしまった可能性がある。シャープの内部の人に聞いても、「経営陣の戦略の全面否定になるので液晶批判はできない」と言っていました。

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