三枝成彰 第1回 「脊椎間狭窄症の大手術3日後から作曲作業に復帰した新作オペラ『KAMIKAZE―神風―』」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

 作曲家、三枝成彰の魅力は何かと問われれば、こぼれるような笑顔と明るさだ、と答えたい。三枝は10年前、二人で飲んでいたときに「オペラに金がかかり、気がついたら7億円の借金を作ってしまった」と笑顔で明るく語ったものである。いま、数百万円の借金の重みで、自ら命を落とす人間が後を絶たない。人間はわずかな借金だと罪悪感から死を選び、それ以上だと開き直ったり、また銀行も借り手を大事にするのではないか。

 三枝成彰はわたしより1歳若く、当年とって70歳になり古希を迎えた。本人も世間も、三枝が古希になったなんて冗談だろう、と思っている。7億円の借金を70歳までに返却しようと努力したが果たせず、いまだ1億円少々が残っているそうだ。

 じっさいオペラには金がかかる。ベートーベンの時代も、ロウソク代まで作曲家持ちだったという。企業は不景気を理由にスポンサーになることを拒む。株主に対する配当を優先し、コンプライアンス委員会がうるさいといい多額の寄付を渋る。いま、三枝成彰はオペラ公演のすべての借金を悠々と背負って笑っている。

 そんななか、三枝成彰は新しいオペラの作曲に毎日毎晩精を出している。題して「KAMIKAZE―神風―」。~第二次世界大戦で亡くなられた全世界の人々に捧げる~、とサブタイトルで謳っている。そう、このオペラは"神風特攻隊員"の愛と死の物語である。