電波オークションより一桁安い金額でプラチナバンドを手に!「タフネゴシエーター」千本会長からイー・アクセスを時価の3.5倍で買収したソフトバンク孫社長の勝算
〔PHOTO〕gettyimages

 ソフトバンクの孫正義社長は1日、千本倖生会長の率いるイー・アクセスを株式交換で買収すると発表した。

 携帯電話業界を代表する2人の風雲児が合意した買収劇で、何よりも筆者が驚かされたのは、孫社長がイー・アクセスの株式に5万2000円という評価額を付けた点だ。この価格は、時価(9月28日終値)の実に3.45倍という常識では考えられない高い評価額である。

 この高値にこそ、この買収劇の成算を左右する鍵が隠されている気がしてならない。

 吉と出るのか、それとも凶と出るのか‐‐。今回と、来週の筆者の連載コラムの2回に分けて、きっちりと検証してみたい。

孫社長は、高値掴みをしたのだろうか

 「(我が社の)株主の皆様に対して、よいソリューションを提供できたのではないでしょうか」---。

 孫ソフトバンク社長と仲良く並んで記者会見に臨んだ千本イー・アクセス会長は、満面の笑みを浮かべて、自社の売却に胸を張ってみせたという。

 経営者として長年の願いが叶い、千本氏の胸に万感の思いがこみあげていたであろうことは想像に難くない。

 そのことは株価と売却額の差を見れば明らかだ。今回の買収劇によって、イー・アクセスの株主は、過去数カ月にわたって1万5000円前後で低迷していたイー・アクセス株と引き換えに、その3.45倍の5万2000円分のソフトバンク株を取得できることになったのである。

 この種のプレミアムは、時価に5-10%程度上乗せするのが一般的な相場だ。3.45倍というのは、異例中の異例。それだけに、買収劇を仲介した金融機関にも、「異常なほど情報管理に神経質になった」と打ち明ける向きがあった。

 公社時代の日本電信電話に入社したエリートの千本氏は、関西勤務の折、京セラの稲盛和夫社長に出会い、NTTの通信市場独占体制に風穴を開ける起業に夢を膨らませて、旧第2電電(旧DDI、現KDDI)の創業に名を連ねた。しかし、PHS事業の創業(旧DDIポケット、現ウィルコムの設立)時に大きなトラブルに直面し、稲盛氏と対立してDDIグループを去らざるを得なくなった。

 一時は学者への転身を図ったものの、ビジネスマンとしてNTTと互角に競える会社を育てる夢を捨てられず、ゴールドマン・サックスの花形通信アナリストだったエリック・ガン氏と組んで通信業界へのカムバックを試みた。そうして、1999年に設立したADSL事業中心の通信ベンチャーが、今回の売却対象になったイー・アクセスなのだ。

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