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特別レポート なぜ「みな殺し」を容認するのか「消えた習近平」その真相は胡錦濤に「軟禁」されていた
中国が攻めてくる日本人よ、戦いますか 第4部
トップ後継まで、あと1ヵ月に迫った習近平〔PHOTO〕gettyimages

 10月18日開幕と言われる第18回共産党大会を前に、引退する胡錦濤と後継者である習近平との間で、・最終戦争・が展開されている。そしてこの凄まじい権力闘争の渦中に、日本が巻き込まれてしまった。

「毛沢東時代に立ち返れ!」

 「水泳で背中を打撲した」「肝臓がん手術を受けた」「重度のストレスで立てなくなった」・・・・・・

 来月、中国のトップに立つ習近平副主席(59歳)が、9月初旬から2週間にわたって消えた。世界中が様々な憶測を飛ばしたが、この前代未聞の事態の裏に、凄まじい権力闘争が隠されていた---。

 中国全土の大学で一年の始まりを迎えた9月1日、北京市の北西部に位置する広大なキャンパスで、始業式が開かれた。その大学は、歴代皇帝の庭園「頤和園」北部の、周囲を厳重に警備された3万1200m2もの広大な杜の中にひっそりと立っている。それが、一般の北京市民にはまったく馴染みのない大学「中央党校」である。

 中央党校は、1933年に、革命の根拠地にしていた江西省瑞金で創設され、以来、中国共産党の最高学府として約80年にわたって君臨してきた。中国では、一党支配を続ける共産党の将来の幹部候補生として選抜されたエリートたちは、原則として1年間にわたって、この中央党校で、思想強化のための教育を受けねばならないのだ。

 中央党校の歴代の校長は、毛沢東主席、劉少奇主席、胡錦濤主席など、国のトップが兼任してきた。そして'07年12月から現在まで校長を務めているのが、習近平副主席である。

 習副主席は、10月に開かれる予定の第18回中国共産党大会で、胡錦濤主席から、中国共産党トップの「共産党総書記」ポストを引き継ぐことが内定している。平たく言えば、中国は10年間の胡錦濤時代を終えて、来月から習近平時代を迎えるのである。

 そんな習近平校長は、中央党校の始業式で、約1600人の「新入生」を前に挨拶に立ち、次のように強調した。

 「ここは普通の大学とはまったく違う場所だ。君たち党の幹部たち、特に年若い幹部たちは、ぜひとも党の根本的な理論をしっかり学んでほしい。党の原点である理想的信念の踏襲こそが、君たち幹部にとって重要なのだ」

 少し抽象的な表現だが、要は「党の根本的理論」「党の原点」とは、「建国の父」である毛沢東主席の思想のことである。

 習近平は毛沢東主席を「政治の師」と仰いでいて、娘の名前に「明沢」と付けたほどの"毛沢東狂"として知られる。この日も「いまこそ毛沢東時代に立ち返れ!」と、将来の幹部候補生たちを鼓舞したわけだ。

 毛沢東時代の革命の原点とは、日本帝国に勝利して建国を成し遂げたと主張する「中国共産党史」に他ならない。"親日派"と言われる胡錦濤主席が中央党校校長を務めていた時代('93~'02年)に強調していた、「対外開放と対外協調」とは、隔世の感がある。

 9月1日、習校長は、このような「反日的訓辞」を垂れた後、校長室で、刷り上がったばかりの党校機関紙『学習時報』の「新学期記念特集号」に目を通した。そして、満足げに肯いたのだった。

 その紙面には、次のように記されていた。

 〈わが国はこの10年間で、幹部の腐敗がはびこり、国民の生活格差が深刻になり、いまや多くの庶民が生活苦に喘いでいる。こうしたことは毛沢東時代にはあり得なかったことで、「改革開放」の名の下での過度の対外妥協政策の副作用である。中国共産党は、図らずも党の根本理論にそぐわない『失われた10年』を過ごしてしまったが、この秋からは正しい指針を持った新時代を迎えるであろう〉

 「失われた10年」とは、習近平副主席の"政敵"である胡錦濤主席の執政時代を指している。中央党校機関紙は、日本を始め、対外的に八方美人だった胡錦濤時代を「失われた10年」と一刀両断し、中国はこの10月末からは対外的に妥協しない強硬路線で臨むと宣言したのである。

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