社会保障・雇用・労働 中国
中国13億人を動かすのは結局、一部の超エリート軍団だということを忘れてはならない! ~「無業遊民」の狂気と「中庸の精神」
国慶節を祝う飾りと警官〔PHOTO〕gettyimages

 中国は10月1日、63回目の国慶節(建国記念日)を迎えた。その前日の仲秋節から数えて8連休である。北京の人々は、あのヒステリックな反日デモがウソのように、暢気に月餅を食べたり、凧揚げをしたりしている。北京では11月8日から、胡錦濤総書記時代から習近平新総書記時代に代わる第18回中国共産党大会が開かれる予定で、そのものものしい警備が始まっている。 

 思えば中国は、「中庸」という哲学の本家本元である。儒教において「中庸」は、論語、大学、孟子とともに、「四書」として崇められた。すなわち、あれほど狂乱のデモを起こした後には、その「反動」が表れるということだ。

 実際、深圳、西安、青島などで、押し入り強盗のように大暴れした男たちが、続々と逮捕され始めた。テレビでは、「暴力は愛国ではない」と諭す時事番組が、連日放映されている。

最大5000万人のプータロー

 そんな中、「無業遊民」と呼ばれる人々が、中国で改めてクローズアップされている。これは、デモの主体となったのが、学校を卒業しても職に就かない、もしくは職に就けない「無業遊民」たちだったからだ。「無業遊民」を適切な日本語に訳すと、「プータロー」だろうか。

 7月に卒業式を迎えた中国では、700万人もの大学生が卒業した。だが、まともに就職できているのは6割くらいと言われる。つまり、300万人近い大学卒業生が、「無業遊民」か、それに準じる地位に甘んじているわけだ。

 大学を卒業した人は700万人だが、今夏の高卒は1500万人、中卒は2000万人くらいいると見込まれる。この中で仮に、300万人強ずつが「無業遊民」になったとして、中卒、高卒、大卒合わせた「無業遊民」は、ざっと1000万人にも上る。これはあくまでも、今夏卒業した中・高・大3年分の新規の「無業遊民」であって、15歳から30歳までの若者がこの5倍いるとして、中国には最大、5000万人もの「無業遊民」が存在することになる。その予備軍まで含めると、1億人近いかもしれない。

 彼らは当然ながら、社会に対する不満分子である。1日24時間ムシャクシャして仕方がないが、街で大暴れするほどの勇気はない。そうかといってスポーツジムで汗を流すカネもないし、ソープランドのような風俗店やラブホテルは、そもそも表向きには存在しない。中国では、ネットのエロサイトさえ存在しないのだ。

 彼らのストレス解消法と言えば、せいぜいが毎週土曜日にサッカースタジアムへ行って、90分の試合時間中ずっと、「シャービー! シャービー!」と、声が嗄れるまで叫び続けるくらいのものだ(スミマセンがこの言葉は赤面して訳せません)。だから野田首相は、中国全土の5000万「無業遊民」たちに、格好のストレス解消の材料を提供してしまったのだ。

 私は、北京で反日デモが最も激しかった9月14日、15日、16日の週末3日間、日本大使館前で、ひねもすデモを見学していた。とにかく1万人もの「無業遊民」を主力とする若者たちが亮馬橋路の日本大使館前に殺到し、空前絶後の騒動を起こしていた。まさに狂気の世界だ。

 そのうちの一人に仕事を聞いたら、「中学卒業後、河南省の田舎から北京へ出てきて左官工事の職人をやっていたが、折からの不動産不況で、ここ数ヵ月はまともに仕事をしていない」と答えた。ではなぜ反日デモに参加するのかと聞いたら、「工体(北京のサッカーチーム『国安隊』の本拠地の国立競技場)へ行けば25元取られるが、ここならタダで叫べるし、英雄気分に浸れるから」と答えた。彼は「釣魚島(尖閣諸島)なんて何の興味もない」と、吐き捨てるように言った。この青年などは、ストレス解消にやって来た典型的な「無業遊民」であろう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら