谷垣総裁が出馬断念した日に元首相が密会した相手とは?安倍新総裁「逆転勝利」を呼び込んだ麻生ファクター「19票のゲタ」
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 自民党総裁に安倍晋三元首相が選出された。40年ぶりとなった総裁選決選投票、そして56年ぶりの逆転勝利で総裁の座を射止めた安倍氏の勝因を考えてみたい。そのためには、9月14日告示・26日投開票の総裁選が実施されるまでの経緯を遡る必要がある。

 谷垣禎一前総裁が出馬断念を言明したのは、告示直前の10日午前に行なった緊急記者会見だった。安倍氏は同日夕、極秘裏に麻生太郎元首相の個人事務所を訪ね、総裁選に出馬する意向を明かし、支持を要請した。

 その頃は、安倍氏が所属する清和会(町村派)の事実上のオーナーとされる森喜朗元首相が安倍氏に総裁選出馬を見送るよう説得していたこともあって、安倍氏出馬は流動的であった。というよりも、安倍氏の母・洋子さん(故岸信介元首相の娘)や昭恵夫人も出馬に消極的だと伝えられ、永田町では安倍氏の不出馬説が支配的な見方であった。

 ところが、実際には出馬を決断した安倍氏は国会議員票固めの先駆けとして麻生氏にアプローチしていたのである。その席で麻生氏は安倍氏に対し、消費増税関連法案成立をもたらした民主、自民、公明3党合意(6月15日)と3党枠組み堅持路線を分けて臨むことを条件に支持を約束したというのだ。

 党内の反対論に抗して3党合意にこぎつけた谷垣氏の再選を望んでいた麻生氏には譲れない一線だったのだ。同時に、同氏は安倍氏に大島理森副総裁(当時)に会い、3党合意を尊重することを伝えた上で支持を求めるよう助言したとされる。事実、安倍氏は翌日、大島氏と会談し支持の内約を得ている。

麻生派と高村派を合わせた19人の議員票

 このようにして安倍氏は、麻生氏、さらに同氏の盟友・高村正彦元外相の支持を取り付けたことで為公会(麻生派)と番町政策研究会(高村派)を合わせた19人の国会議員票を告示前から掌中にしたのだ。平たく言えば、安倍氏の出馬表明での推薦人20人(票)と自身の1票を合わせた21票に「19票のゲタ」を履かせてもらったうえで総裁選に臨むことができたのである(厳密に言えば、安倍氏推薦人の中に3人、麻生・高村派から名前を連ねている)。

 つまり、第1回投票で獲得した国会議員票54人中37人は、その基礎票であったということだ。残る17人が、安倍陣営が総裁選の過程で各派・無派閥に働きかけて獲得したものだ。

 決選投票は安倍氏108票、石破氏89票という結果だったが、第1回投票の国会議員票58票の石原伸晃前幹事長を下回った54票中の37票=ゲタがなければ、安倍氏は第1回投票で第2位になれなかった可能性があったということである。つまり、麻生、高村両氏の安倍支持(=麻生ファクター)が安倍総裁誕生のトリガー(引き金)となったということだ。

 それはまさに、28日に発表された安倍執行部の陣立てに端的に表われている。石破氏が幹事長に起用されたのは、党員・党友の地方票(300票)で安倍氏を含め他候補を圧倒する165票を獲得したのだから当然の処遇である。だが、高村氏が副総裁に指名され、安倍氏の選対本部長を務めた甘利明元経済産業相が政調会長に起用されたことからも、麻生ファクターが安倍氏の逆転勝利の最大理由と言っていいかもしれない。

 麻生氏が安倍内閣の外相時に甘利氏も経済産業相であったが、当時、最小派閥・大勇会(現在の為公会)を率いた麻生氏と、山崎派の一員だった甘利氏は当選9回同士ということもあり、2人は派閥と年齢を超えた「友人」なのである。

 安倍氏の逆転勝利の要因は他にもある。次期衆院選に立候補しないと言明した森元首相、既に政界を引退している青木幹雄元官房長官、そして古賀誠元幹事長ら「長老」が国会議員票を裏面で遣り取りしたことへの反発、「尖閣」「竹島」など領土問題が出来したことが追い風となったこと、言われてきたように国会議員の中に石破氏に対する反発が少なくないこと、などだ。

 それにしても、安倍新執行部の陣容:安倍総裁、高村副総裁、石破幹事長、菅義偉同代行、細田総務会長、甘利政調会長、浜田靖一国対委員長は、民主党の野田佳彦首相(代表)、輿石東幹事長、安住淳同代行、細野豪志政調会長、仙谷由人同代行、山井和則国対委員長のラインナップとの対決姿勢を強めていくはずだが、果たしてその攻防戦の行方は如何に、である。

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