羽佐間正雄 第4回 「稀代の左腕、金田正一の剛速球がミットを持たないぼくに「ビシッ!」と決まった瞬間」

撮影:立木義浩

第3回はこちらをご覧ください。

シマジ 『WiLL』誌で毎月羽佐間さんが健筆を振るっている連載「昭和を彩ったスーパースター伝説」はじつに面白いですね。名アナウンサー=名文家なんですね。少なからずあの『WiLL』一冊のなかで羽佐間さんの文章は光彩陸離の名文です。とくに比喩が秀逸です。

羽佐間 いやいや、有り難うございます。川上哲治を書き続けて二年近くになります。ハナちゃん(花田紀凱編集長)から川上哲治だけで一冊の本に纏めましょうよ、といわれていまして、老骨鞭打って書いているんです。あの連載はシマちゃんの月下氷人のお陰です。

シマジ 川上哲治は前人未到の9連覇を達成したのち、NHKの解読者に迎え入れられて羽佐間さんと一緒に仕事をしたんですね。だから川上哲治のディティールが生き生きと蘇ってくるんでしょう。羽佐間さんは川上哲治の生き証人として、また語り部として選ばれし人だと思います。

 たとえは、9月号でしたか、9連覇の偉業は「決して監督1人の業ではなく、コーチという補佐役の団結にあった」と川上に言わせていますね。

羽佐間 そうです。非情に徹するのは指揮官の役目だと川上は語り、試合のあとで、牧野茂、藤田元司、荒川博、山之内一弘等と"復習ミーティング"を重ねていたそうです。これぞ入念をもって事にあたる川上の流儀なのです。

 監督とコーチ、コーチとコーチが自説を曲げずに徹底的に議論応酬を繰り返したようです。「それが9連覇を果たした最大の要因といえるでしょうな」と川上自身は断言していました。たしかに監督とコーチの仲良しクラブでは勝利への荒波は越えられない。勝負はそんなに甘いものではありません。