日系子会社で不正経理が横行!? アジア拠点の拡充には経理や財務・税務といった専門職人材の確保が急務

 「アジアの子会社を舞台にした不正がもの凄いそうです。それも日本企業の子会社だけがカモだというから驚きます」

 日本CFO協会の谷口宏専務理事は舌を巻く。大手会計事務所のアジアの責任者に会った際、そんな話を聞かされたのだという。

 経済がグローバル化すれば、好むと好まざるとにかかわらず、日本企業は海外展開せざるを得ない。中でも成長著しいアジア市場を抜きにして、大半の企業の将来ビジョンは語れないだろう。そんなアジアに進出した日本企業の子会社で不正が横行しているという。

 アジアの子会社へ日本の本社から派遣されて来る社長や幹部に経理や財務など内部管理のプロは少ない。営業畑を歩いた人が付け焼刃で経理書類を見ているケースが意外と多いのだ。そうなると、現実の管理は現地で採用した社員任せとなりかねない。

 もちろん数字には目を光らせる。だが、在庫の把握や現地代理店との決済など具体的なやり取りと数字の整合性となると現場任せ。そこに、商品の横流しや経費の流用などが起きる素地がある、という。無条件に現場を信用する"日本流経営"の裏をかかれているのだ。

日本企業の子会社だけが"カモ"になっている

 本社から来たエリートは数年で帰国するが、現地採用の中堅幹部は何十年のベテラン。そんな現場に任せているため、不正の実態はなかなか発覚しない。ゆえに、アジア子会社で不正が横行しているという事実にすら気付かない。

 本国以外での子会社管理に歴史を持つ欧米企業や、その国の企業では、まずそうした不正は起きない。日本企業の子会社だけが"カモ"になっているのだが、欧米の会計事務所の幹部ぐらいしか、その実態に気付いてもいない、というのだ。

 原因は明らかに、「経理や財務など経営管理の専門知識を持った人材が日本企業の子会社に圧倒的に不足しているからだ」と谷口氏は言う。

 その傍証とも言える結果が、CFO協会が行った実務検定で明らかになった、という。CFO協会は国内の経理・財務部門などの社員の知識レベルを計る「経理・財務スキル検定FASS」を実施している。これまでにのべ2万5000人以上の大手企業の社員が受験してきた実績がある試験だ。

 その試験を日本企業のアジア子会社の社員を対象に実験的に実施したのだ。対象は中国、インドネシアなどアジア5ヵ国。試験は現地語で、試験内容も現地の商習慣などを反映させて見直した。日本企業のアジア子会社で、経理・財務などに従事する現地人社員1386人が受験した。

 試験結果はA~Eの5段階で評価しているが、これまでに日本国内で受験した2万5327人の分布は、A=11%、B=16%、C=30%、D=31%、E=12%だ。

 アジアでの結果はどうだったか。中国子会社の社員は総じて優秀だったが、Aレベルが極端に少なかった。谷口氏は、「中国にAレベルの人材がいないのではなく、日本企業がAレベルの人を採用できていないのではないか」と分析する。

世界統一FASS検定のパイロット・テストの成績分布(人)

 中国では欧米企業の子会社のCFO(最高財務責任者)などに就く中国人の給与は、当然のことながら欧米水準。日本のメーカーなどではとても支払うことができない高水準になっている、という。

 インドネシアはC以上がゼロという惨憺たる結果だったが、同国内に経理・財務の専門家が圧倒的に少ないであろうことを示している。ベトナムやフィリピンも同様だ。

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