生活保護「受給者バッシング」の正体---年間支払額3.3兆円、受給者210万人の「世界」を徹底検証 【第2回】安田浩一(ジャーナリスト)

2012年10月11日(木) g2
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 彼女はネット[注10]を見るのも嫌になったという。

 「(受給者は)甘えているだけ」「クズ」「怠け者」そんな文言がネット掲示板にはあふれている。

 8月3日、生活保護の申請・受給の相談に乗っている市民団体「全大阪生活と健康を守る会連合会」(大生連)と大阪府との間で、保護行政のありかたをめぐる集団交渉が行われた。会場となった府庁舎2階の会議室には大生連スタッフをはじめ、100人を超える生活保護受給者も集まった。

 会場からは「肩身の狭さ」を訴える声が相次いだ。

 「生活保護バッシングの報道を見るたび、身を切られる思いがする」「不正しているのではないかという周囲の視線が怖い」「近所に配慮してエアコンさえつけることができない」。

 大生連の大口耕吉郎事務局長は顔を歪めながら話す。

 「いったいなぜ、受給者がここまで追い込まれないといけないのか。世間の冷たい視線によって、いま、多くの受給者はますます孤立を深めていますよ」

 不正許すまじの大合唱は止まらない。

 それにしても、生活保護は「不正受給」によって本当に危機的状況にあるのか。取材を進めてみると意外な事実が見えてきた。

受給者急増の背景

 生活保護の受給者数が増え続けているのは事実だ。厚生労働省のまとめによると、全国で生活保護を受けている人は昨年度、月平均で210万人を突破した。生活保護費の総額は2010年度で約3兆3000億円にものぼる。統計が開始された1951年度以来、過去最高の数字だ。

 ちなみに同年度の受給者数は約204万人と記録されている。受給者数だけを見れば、戦後混乱期を上回るものだ。もっとも受給者数が少なかったのは1995年度。受給者数は約88万人である。

 その後、バブル崩壊の影響などを受けて上昇に転じ、特に09年度以降における伸びが著しい。同年度の受給者数は前年比10パーセント増の約176万人。以降、現在までの間に30万人ほどの増加を見せている。これはリーマンショックの影響でリストラ、派遣切りが相次ぎ、失業者が急増したことが背景にある。

[注10] 特にネット言論においては生活保護受給者に対するバッシングが過熱している。「怠け者」「働け」といった文言が目立つ。また、取材中も「生活保護はもっと厳格に運用すべきだ」といった言葉を何度も耳にした。
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