企業・経営 国際・外交
反日暴動の影響を知日派中国人経営者に聞く
「国と国との激しい対立になったらできることはない。良識が通じない社会情勢になってきた」

〔PHOTO〕gettyimages

 日本政府の尖閣諸島国有化宣言により日中関係が最悪の状態になりつつあるが、ビジネスの現場にも大きな影響が出始めている。キヤノンは操業を停止、パナソニックの現地工場が襲撃を受けたり、日本車が焼かれたりとまさに騒乱状態にある。

 中国の対応を批判するのは簡単だし、ナショナリズムを煽れば大衆受けはする。しかし、今回大問題に発展した本質的な原因は、中国側ではなく、民主党政権の外交力のなさにあると筆者は感じる。

郭越悦氏(筆者撮影)

 こうした中で、哲学の研究で修士号を持ちながら日中間で30年近くビジネスの最前線に立ち、日中の文化の違いにも詳しい東方貿易(本社・大阪市)の郭越悦社長(57)に今回の問題が今後どのような形で収束するのか、あるいは日中関係がどのような展開になるのかについて聞いた。

 読者にとって郭氏は無名の存在であるので、まず、郭氏の経歴と会社概要について説明する。

日中の製造業の現場を最もよく知る中国人

 日本の自動車や電機産業を中心とするもの造りの世界で郭氏は、架け橋的存在として、「日中の製造業の現場を最もよく知る中国人の一人」(大手部品メーカー社長)と言われる知日派の経営者である。そして「日本と中国の産業の長所と短所を理解したうえで、お互いが補完できるようにネットワークを構築していきたい」との経営哲学も掲げている。

 郭氏は日中の国交が回復した1972年、上海の名門、復旦大学外国語学部日本語学科に入学。当時はまだ「文化大革命」の時代であり、大学に行ける人は珍しかったが、特別選抜で入った。日本語を学んだ後、北京にある社会科学院大学院に入学、「現代西洋哲学の日本への影響」を研究して83年に修士号を取得。その間、日本の関西大学に留学してサルトルを研究した。

 もともとは大学教授になるつもりだったが、「日本社会の本質を学ぶためには研究よりもビジネスのほうがいい」と考え、84年に再来日。日商岩井(当時)に入って機械ビジネスの修業を積んで独立。そして91年に東方貿易を起業した。

 主な事業は、日本製工作機械を中国に輸出することだ。その付属品である金属を固定する「治具」などを中国人作業者が使いやすいようにきめ細かくカスタマイズし、保守サービスも素早いことで評価を得た。そのために上海や天津、広州などにはグループ企業としてエンジニアリング会社を置く。

 このほかにも家電や自動車の部品試験装置の開発・生産の合弁会社を設立。日立製作所やパナソニックなどが主な納入先だ。自社で部品自体の製造も行なう。グループで年商約70億円。月の半分ずつを上海と日本で過ごし、日中の産業界に太い人脈を築いている。

 郭氏は中国のエリート人材の獲得、養成にも力を入れ、日本向けビジネスに合うように品質管理やチームワークの大切さを徹底的に仕込む。顧客である日本企業や日本人の特性を把握したうえで、中国人従業員も使いこなせる能力を重視しているからだ。

 筆者は郭氏が経営する関連企業2社を中国に訪ね、中国人トップにインタビューしたことがあるが、みな日本に親近感を持ち、日本通だった。日本の大学に留学して日本文学や日本史を学んだ後で郭氏に誘われて転職した2人が現地法人を管理していた。

 郭氏とのインタビューのやり取りは次の通りである。

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