野球
二宮清純「水谷実雄の指導法」

 阪神は来季の1軍打撃コーチとして、広島、近鉄、阪神などで打撃コーチを務めていた水谷実雄さんを招聘するようです。

 水谷さんと言えば、広島のコーチ時代、前田智徳選手や江藤智さんらを指導したことで知られています。

 水谷さんの打撃理論の基本は「円の動き」です。これは、どういうものでしょう。以下は以前、本人から聞いた話です。
「円の中心は(右バッターの場合)あくまでも右足。これを軸にして、そこから上体に力を与え、左足に力を送り込んでいく。右足が生きているか、死んでいるか。オレがチェックするのはその点だけだな」

“代打の神様”が認めた男

 現役時代、水谷さんは内角球を得意にしていました。腕をたたんで、器用にレフト方向に運ぶのです。配球を読むのもうまく、広島時代の1977年には3割4分8厘の好打率で首位打者に輝きました。83年には阪急で114打点をあげ、打点王を獲得しました。

通算代打本塁打27本の世界記録を持つ高井

 水谷さんが阪急に移籍した頃、ここには高井保弘さんという“代打の神様”がいました。高井さんは相手ピッチャーのクセを細かくメモしたノートを持っていました。そのノートに目を付けたのが水谷さんです。
「高井さん、オレのベンツとそれを交換してくれんか?」。真顔でそう頼んできたそうです。

 初めてのパ・リーグということもあり、水谷さんにも不安はあったのでしょう。「しかし、まさかオレのノートに目を付けるとは……。“コイツは仕事ができる男やろなぁ”と思ったよ」。高井さんは、そう語っていました。