メディア・マスコミ ドイツ
ドイツでは中国に同情的な新聞報道も。「反米暴動」「反日暴動」に感じる違和感と、世界への情報発信で遅れをとる日本政府への歯がゆさ

北京の日本大使館前で繰り広げられた反日デモ(9月18日)〔PHOTO〕gettyimages

 世界中で暴動が起こっている。ドイツのニュースをつけると、アラブ諸国での反米暴動が凄まじく、日本のニュースを見ると、中国の反日暴動がおどろおどろしい。

 ただ、動機も状況も違うのに、デモに参加している人たちの表情が、驚くほどそっくりだ。皆が異常に興奮し、忘我の境地で絶叫している。星条旗や日の丸をこれ見よがしに踏んづけたり、燃やしたり。皆、何かに憑かれたようで、まさにエクスタシー状態。窓ガラスを割る、建物を壊す、車に火をつけるなど、気が触れたように器物破損にいそしむ姿には、高まった感情だけが猛々しく、理性は感じられない。憎悪と興奮が自家発電(!)によっていや増していくところも、まるでそっくりだ。

 それを見るとき、まず、事態の良し悪しよりも、「ああ、これが日本人でなくてよかった」という気持ちがこみ上げる。こんな人たちに囲まれて暮らさずに済んで、本当によかった。日本人は普通、どんなに怒ってもこういうふうにはならない。これほどの理性の崩壊、そういって悪ければ、冷静さの放棄、そして暴力の噴出は、私たちには真似が出来ない。

 海外から様々な事象を見ていて、「もっと怒れ、日本人!」と歯がゆく思うことはままあるが、しかし、こういうすぐに興奮する人たちと同胞であるよりは、まだ歯がゆい同胞に痺れを切らしているほうがずっとましだ。

映画を広めたのはイスラム原理主義の影の支援者?

 アラブの反米暴動は、アメリカで作られたイスラム誹謗映画が原因だと言われている。しかし、リビアでアメリカ大使が殺害された事件は、それとは関係がない。これは9.11にちなんだイスラム原理派のテロ活動だろう。もっとも、そのあと野火のように広がった暴動では、集まった民衆は、確かに例のムハンマド冒涜映画に対して抗議している。とはいえ、これも何だか腑に落ちない。

 映画の一部を見たが、あまりにも幼稚で趣味が悪い。中学の映画部でももっと上等なものを作るだろう。本気で相手にするのがバカバカしいと、冷静な頭の持ち主なら思うはずだが、イスラム教徒にしてみれば神聖なる予言者がからかわれたのだ。百歩譲って、彼らの怒りと抗議する気持ちは理解するとしよう。

 だが、そのあとがいけない。アメリカの公館を襲うというのは、どう見てもお門違いだ。この映画をアメリカ国民が喝采したというなら、アメリカの大使館や領事館に火を付けるのもわかるが、そんなことは一切起こっていない。アメリカに住むアメリカ国籍の人間が作ったらしいが、アメリカ国民とは何の関係もない。それなのに、かように低級な挑発に正しく反応し、憤怒し、暴動を起こしては、相手の思う壺ではないか。

 思う壺? しかし、よく考えると、この映画を作った人間の意図も、今一つ不明だ。モハメッドを冒涜し、イスラム教徒を挑発しているように見えるが、果たして本当にそれが目的なのか。ずいぶん前にできていたものを、アラブ語に吹き替え、出してきたのがつい最近。しかし、それが誰の手によってなされたのかもわからない。

 ただ結果的に、これによってイスラム原理主義者たちは「アメリカに死を!」と絶叫し、暴力行為を正当化し、アラブの民衆の頭を過熱させ、どんどん急進イスラムの方向に誘導している。問題の映画をデモの参加者全員が見たとは到底思えないのだが、皆、見た気になって、気分よさそうに怒りを爆発させている。彼らが発散しているのは、実は、元々心の中に燻っていた対米憎悪なのだろう。

 つまり、この映画を広めた者の目的が、反米感情を煽り、民衆の心理をイスラムの求心力でまとめあげ、イスラム原理主義者の勢いを伸ばし、そして、アメリカ政府を困難に陥れるということだとしたなら、これは今のところ、まさしく大成功を博している。とすれば、この映画をアラブ世界に広めた者は、イスラム原理主義の影の支援者なのだろうか?

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら