消費税が定着した今、酒税を別途課税する必然性はあるか!? 消費税率引き上げを機に考えたい税制のあるべき姿
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 消費税率が現行の5%から段階的に10%に引き上げられることが決まり、酒やたばこに課されている物品税との「二重課税問題」が再燃しそうだ。酒やたばこには、高い酒税やたばこ税がかけられているが、その税額を含んだ小売価格に消費税が課されている。

 消費者の目から見れば、税金に税金がかかっているわけで、二重課税だという批判が根強くある。若者を中心にアルコール離れが顕著になる中で、税負担が大きくなれば、売り上げにも響きかねないと、酒造メーカーや小売店は危機感を強めている。

 酒類にかかる税金は重い。国税庁の資料の例示でみてみると、税率が低い清酒でも、1.8リットルで1,888円(税込)の商品の場合、酒税が216円、消費税が89円含まれている。税込価格に対する比率は16.2%だ。消費税率が10%になると消費税分が178円になり、税込価格の19.9%が税金ということになる。なんと一升瓶の5分の1が税金というわけだ。

 こうした例示は分かりやすいようでいて、実は、税率を見誤らせている。税抜き本体価格に対する税率という視点で考えれば、現行で19.3%。それが25.0%に上昇することになるのだ。

 ビールの税金はさらに高い。大瓶1本633ミリリットルで税込345円の商品の場合、酒税は139円、消費税が16円かかっている。税込価格に対する税金の割合は45%だ。これが増税後は47%に上がる。だが、前述のように税抜き本体価格に対する税率でみれば、82%から90%へと上昇することになるのだ。

 そんな高税率をなぜビールにだけかけるのだろうか。

酒だけに課税するのが「公正」で「中立」なのか

 もともと、酒税は伝統的に国家財政を支える1つの柱だった経緯がある。1896年(明治29年)に酒税法が制定されたが、1899年度(明治32年度)の段階では国の税収の3分の1が酒税による収入だったという。昔の人は良く酒を飲んだ、ということもできるが、産業基盤が脆弱な中で、法人税など他の税制がまだまだ未発達だったことがうかがえる。

 教科書で習う税の三原則は「公平」「中立」「簡素」。娯楽が少ない中で、多くの国民が酒を飲んでいた時代、幅広い層の国民から徴税するには酒税は理にかなっていたのだろう。また、商品に個別に税をかける物品税は徴税面でも「簡素」だったと言える。戦後、1953年(昭和28年)に現行の酒税法が制定された後も、酒税は間接税の柱の1つとして機能し続けた。

 だが、酒税を巡る環境は一変している。国税収入に占める酒税の割合が大幅に低下しているのだ。明治に3割と言われた国税収入に占める割合(特別会計分を含む)は1975年度(昭和50年度)には6.3%にまで低下、その後もジリジリと下がり続け、2012年度(平成24年度)予算では3%となった。酒税の税収額も、バブルまっ盛りの1988年度(昭和63年度)に2兆2,021億円のピークを付けたが、2012年度予算では1兆3,390億円と1980年度以降最低となっている。

 国税庁は、税収が減る中で安定的に1兆円を超える税収をもたらす酒税は重要だという立場だが、消費税が定着した今、なぜ酒税を別途課税しなければならないのか、という明確な説明がしにくくなっているのも事実だ。

 タバコに関しては税金を引き上げるのが先進国の潮流だが、これは健康に害を及ぼす可能性のあるタバコの消費を抑制しようという税収とは別の狙いがある。一種の懲罰的な性格を持った税金と見ることもできる。タバコの害については議論があったが、ほぼ国民のコンセンサスが得られているだろう。

 酒も同様に健康に悪いから課税を強化すべきだ、という議論も一部にはある。だが、健康志向の高まりや、酒酔い運転への罰則強化などもあり、ノンアルコール飲料への消費シフトが起きている。酒税がなくなったからと言って酒の消費が急増するとは考えにくい。また、様々な娯楽や嗜好品が世にあふれる中で、酒だけに課税するのが「公正」で「中立」なのか、という疑問もある。

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