首相経験者の「再チャレンジ」は柔軟な人材活用の好例となる!? 「安部晋三官房長官」という選択肢とその可能性
自民党総裁選の候補者5名〔PHOTO〕gettyimages

 自由民主党の総裁選が、「次の首相を決める戦い」として盛り上がっている。周知のように、五名が立候補した。石原伸晃幹事長が最有力との下馬評だが、国会議員票による決選投票となった場合に、「二、三位連合」が逆転する可能性もあって、まだ予断を許さない。

 立候補した五名の中で、筆者は、安部晋三氏の動向に注目している。前述のように選挙情勢は流動的だが、安倍氏は、現時点で総裁に選出される可能性がある候補者の一人だ(一回目投票で二位となって、決選投票で逆転する展開だろうか)。

 政治家は、特に首相候補ともなると、四方八方から無礼な評価の声に晒される難儀な商売だ。無礼を申し訳ないと思いつつも率直に本音を言うと、筆者は安倍氏を首相に足る器だと評価していない。かつて、首相在任中の彼の発言を聞いていて、体調不良があったとはいえ、言葉の選び方や論理性に難があり、首相には「脳力不足だ」と評価して、彼の退任にほっとした覚えがある。

 また、ここ数日、ツイッターなどで、いろいろな方のメッセージを読ませて貰うと、かつての安倍氏の、組閣と施政方針演説直後の「首相投げだし」の経緯には、まだまだ世間の風当たりが強いことを感じる。

 しかし、今回の総裁選では、ベストな候補とまでは思わないが、安倍氏が「勝っても、(ぎりぎり)悪くない」と思っている。また勝てなかったとしても、その後に大方が予想する自民党政権で安倍氏が重要な役割を果たせば面白いと考えている(注;筆者は、能力的には林芳正氏に魅力を感じるが、形勢的に苦しいだろうし、総裁に立候補する今、参議院議員であるとは、段取りが悪すぎる)。

政治家のキャリアパスのあり方を考える

安倍晋三元首相〔PHOTO〕gettyimages

 安倍氏を推す理由は四つある。

(1)安倍氏は、経済政策的にデフレ脱却を優先する姿勢が候補者の中で最も強く、経済政策面で期待できる。

(2)安倍氏は、かつて渡辺喜美氏を公務員制度改革担当の大臣に起用して首相在任中に官僚の人事制度改革に取り組んだ(前任者の小泉純一郎氏が逃げた難テーマだ)。また、官僚制度改革に熱心な日本維新の会と近い関係にあるとも報じられている。

 官僚制度改革は避けて通ることが出来ない重要問題だが、この問題に取り組む上で、安倍氏のもともとの指向性と過去の経験、日本維新の会や、みんなの党などとの政策連携の可能性には、若干なりとも期待できる面がある。

(3)候補者間の相対評価の問題として、現在有力とされる石原伸晃氏よりも、安倍氏の方が「マシだ」と判断できる。

 これには、判断の根拠を述べねばなるまい。申し訳ないが、「谷垣氏のために政治活動をして来たのではない」、「福島第一サティアン」など最近の失言を含む石原氏の言葉選びと発言から判断して、石原氏の頭の悪さは、首相時代の安倍氏よりもはるかに程度がひどいと感じる。

 また、政治家としての「胆力」も、石原氏の国交相時代の仕事ぶりや、今回、谷垣総裁と共に野田政権を解散に持っていけなかった不出来な幹事長ぶりから判断して、安倍氏以下だと考えるためだ。

(4)政治家のキャリアパスのあり方として、安倍氏の「再チャレンジ」実現は良い影響を持つのではないかと思われること。

 以下、(4)について、説明しよう。

 安倍氏が、病気を理由に首相のポストを投げ出したのは、彼が五二歳の時だった。五二歳というと、民間のサラリーマンなら、銀行のような人事サイクルが早く人使いが荒い会社の場合、本社のポストを外れて子会社に飛ばされる頃合いだが、普通の事業会社であれば、まだまだ本社で管理職にある「現役」の年齢だ。

 まして、スタートが遅く高齢まで働くことが多い政治の世界では、むしろ若い部類の歳だった。そして、首相経験者は、以後第一線のポストに就かないというムードがあったので、当時の安倍氏の首相ポスト投げ出しには、「これから先の人生が長いのに、気の毒だな」という感想を筆者は持った(当時、安倍氏の再登場を願ってはいなかったが)。

 首相経験者のその後の重要ポスト就任は、故宮沢喜一氏が当時の小渕恵三首相に乞われて蔵相・財務相に就任したのが最近の例だと記憶するが、宮沢氏の場合は、八〇歳を超える年齢もあり、金融経済の危機的状況におけるワンポイント・リリーフというニュアンスが明白な「最後のご奉公」的例外人事だった。

 一方、安倍氏は現在五七歳であり、政治家としてこの年齢は、今回ではなく、一〇年後に首相になってもおかしくない。若年といわないまでも、先のある年齢だ。

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