代表選手はイチロー、石井一久、中村紀洋ほか プロ野球「栄光の'73年組」それぞれの岐路 男の「引き際」を考える

 かつて江川卓が32歳で引退を決めた時、「もっとやれ」との批判も起きた。野球選手が何歳まで現役を続けるか、正解はないし、どちらが幸せかもわからない。「引き際の美学」は選手の数だけある。

イチローの本音

 39歳---サラリーマンなら職場でそれなりのポジションを得て、いよいよ本格的に仕事をしようかという年齢だ。

 しかし、プロ野球選手にとっては違う。ここまでは現役でやってこられたが、あと何年やれるのか。ひょっとしたら今年が最後になるんじゃないか。40歳を目前に「引き際」を考えざるをえない年齢となる。

 ソフトバンク、巨人で41歳までプレーした大道典嘉・現巨人育成コーチ(42歳)は言う。

「一流と呼ばれる選手なら35歳までは本能というか才能でやっていける。でもそこで急にガクッと来るんです。体力的、技術的な衰えに、どんな名選手も向き合わざるをえない。

 そこからはふるいです。35歳を過ぎると36、37とふるいの網の目はどんどん大きくなっていく。若い選手とは求められるものも違ってくる。その変化に対応してふるいの上に立ち続けられる選手だけが、40歳の壁を越えられるんじゃないでしょうか」

 今年、39歳を迎えるのはイチローを筆頭に石井一久、三浦大輔、小笠原道大、中村紀洋、松中信彦ら「栄光の'73年組」と呼ばれる選手たちだ。前後の世代に比べても華と実力のある選手が揃っており、間違いなく球界の一時代を支えた。

 そんな彼らもいま、それぞれの岐路の前に立たされている。

「紅白歌合戦を見ていると演歌のほうが気持ちよくなってきたり、肌が乾燥しやすくなったりもしている。自分も年を重ねてきたのかなあと実感する」

 昨年、38歳のオフにイチローが語った言葉だ。メジャーでのシーズン200安打が11年目にして途切れ、「衰えた」という報道が堰を切ったように流れていたころだ。イチローをよく知る人物が言う。

「『なんでも老化で片付けるのはつまらない人たちですね』とイチロー節で強がっていたが、衰えは本人がいちばんよくわかっている。その証明がヤンキースへの電撃移籍です。イチローは『このままでは(弱小の)マリナーズで引退』という現実を強烈に意識していた。一度はピンストライプを着て優勝争いをしてから辞めたい、それがイチローの本音だったと思います」

 レギュラーを確約されず、慣れない左翼の守備を強いられても移籍を決断する。あと2~3年現役でやれても、打率3割にも、規定打席にすら届かないかも知れない。その成績が、イチローの野球人生の最後となる可能性は高い。