世界中で話題になっている画期的研究 20年後、人類は「不老不死」になる

2012年09月26日(水)
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「女性の高齢出産が増えていますが、不老の薬が実現すれば、70歳、80歳になっても出産できる。女性は生きている限り子どもが持てるようになるでしょう。外見も若いまま維持でき、しわやしみもできない。子どもたちに介護を頼む必要もなくなります」(同前)

 その暁には、まさにバラ色の未来が訪れるというわけだ。だが果たして、われわれの社会は不老不死に対応できるのだろうか。政策研究大学院大学名誉教授で経済学者の松谷明彦氏は警鐘を鳴らす。

「たとえ寿命が延びても、労働寿命まで大きく延びるわけではないはず。無収入の期間が大幅に延び。その上、年金制度は間違いなく成り立たなくなります。

 寿命を10年、20年と延ばすことが医学的に可能になったとしても、人間らしい生活を送ることが出来るかどうかは別問題。動物の世界では、自力で獲物が獲れなくなった時、寿命も尽きる。人間がなぜ稼げなくなった後も生きられるかというと、蓄える術を知っているからです。しかしあまりに長寿化が進めば、蓄えは底を尽き、社会全体でも面倒を見ることができなくなってしまう」

 不老不死になったはいいが、幸せに生きられないのでは本末転倒だ。

内田樹はこう考える

 神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏も、不老不死を実現した人類が直面するであろう苦しみに思いをめぐらせる。

 内田氏は、不死を「ひとりだけ不死」「人類全員が不死」「ある種の人間だけが不死」という三つの場合に分けて考えた。

「ひとりだけ不死というのは、地獄の責め苦に類する経験でしょう。家族も友人も恋人もみんな死んで、たった一人で取り残される。自分の過去の経験を共有した人間が一人もいなくなるんです。かつてどんな冒険をしたのか、どんな激しい恋をしたのか、どんな栄光に浴したのか、どんな卑劣なことをしたのか。何を語っても、いずれ、誰も頷いてくれず、誰も思い出の共同署名人になってくれないときが来る。

 そのとき、『私はほんとうに存在したのか?』という自問に、自分自身さえ答えられなくなるでしょう。自分が誰であるかを誰も知らず、本人もわからないまま不死であることを願う人がいるでしょうか」

 人類全員が不死、あるいは、ある種の人間だけが不死の場合はどうだろうか。

「人類全員が不死というのも地獄度では変わらない。満員電車のような地球で、食べものも飲みものも、着るものも、住む家も足りない中で、他人の体臭や糞尿の臭いにまみれて決して到来しない死を待つような生き方を、誰が望むでしょうか。

 ある種の人間だけが不死という主題は、SFで繰り返し扱われてきました。エリートたちが『不死族=神々』になり、権力も財貨も情報も文化資本も独占する。それ以外の『可死族』は奴隷的な労働で神々に奉仕するという図式です。

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