世界中で話題になっている画期的研究 20年後、人類は「不老不死」になる

2012年09月26日(水)
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 現在われわれが特に力を入れているのは、細胞の内部を治療するための薬の開発です。この薬を用いて、細胞にたまった分子レベルの微細なごみを取り除き、ミトコンドリアの機能不全を修復できれば、(4)や(5)の問題は解決します。

 七つの中では(2)のがん化した細胞の修復が最も難しいですが、これも染色体にはたらく特定の酵素を取り除くことで解決すると考えられます」(デグレイ博士)

 さらに、(3)と(7)の問題は細胞の免疫系を刺激することによって対処できる。(6)の問題については、絡み合って硬くなったたんぱく質を分解する薬が、大手製薬会社によって完成に近づいているという---。以上でデグレイ博士は、老化の原因すべてに解決の見通しをつけたことになる。つまり彼は、不老不死のために解決すべき問題とその方策を示し、ロードマップを描いた最初の科学者なのだ。彼はいま、これらすべてを実現するための研究費を世界中から募っている。

iPS細胞を使えば

 古今東西、不老不死を夢見る権力者たちは迷信にすがり、ときに危険な手段で身を滅ぼすことさえあった。

 強大な権力を背景に不老不死を追い求めた秦の始皇帝は、日夜服用していた〝不死の薬〟が含む金属で中毒をおこし、50歳で世を去っている。16世紀ハンガリーの伯爵夫人エリザベート・バートリは、永遠の美貌を得ようと若い娘の生き血の風呂を好んだが、後に魔女として幽閉された。

 デグレイ博士の考える不老不死も、見果てぬ危険な夢なのではないか、そう思う読者もいることだろう。彼が言う不老不死への道には、どの程度の現実味があるのだろうか。

 アンチエイジングの専門家でもある、京都大学医学部附属病院の近藤祥司医師は、〝不老〟の可能性を否定していない。

「一般に人間の寿命の限界は120歳程度と言われていますが、これは脳の重さや酸化ストレス(細胞内で酸化が進む現象)の蓄積と寿命の相関から割り出したものにすぎません。

 長寿世界一の記録はフランス人女性のジャンヌ・カルマンさん(1875~1997)の122歳です。デグレイ氏が言うように、人間が200歳まで生きられるかどうかは誰にもわかりませんが、少なくとも細胞レベルで老化を食い止めることは可能です」

 ノーベル生理学・医学賞候補となっている京都大学・山中伸弥教授の研究で脚光を浴びた〝幹細胞〟は、デグレイ博士が述べたとおり、細胞の死による老化現象を解決すると考えられている。

 体の再生を司る幹細胞は、加齢とともに減ってゆく。幹細胞がなくなれば、筋肉は痩せ衰え、脳は萎んで死を迎える。逆にこの幹細胞を活性化させたり補うことで、老化を防ぐことができるというわけだ。医学博士の中原英臣氏が解説する。

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