B たしか高校時代の成績はCのほうが良かったんじゃない?
A そうです。特に俺は英語なんて赤点寸前ですよ。
C 外資系証券のトレーダーって英語できなくてもいいの?
A 「マイン(買う)「ユアーズ(売る)」「ダン(取引完了)」、この三つがあればとりあえず大丈夫かな。
B・C ホントかよ!
A トレーダーに必要なものは「運」と、あとは説得力だから。
B どういうこと?
A ものすごく簡単に言うと、株とか債券の売買はゲームだから、同じルールだったら「持ち時間が長い」ほうが勝つ。つまり、上司を「あと3日だけ待ってほしい」と説得できるかどうかで、ゲームの勝敗がまるで変わってくる。
C 俺でもできるかな。
A うん、できるんじゃないかな。ウチの高校から東大に行った奴で、オタクっぽくなければ、できると思うよ。3億円までいくかどうかは別として。
B しかし、アメリカでは公的資金が入ったこともあって、「証券会社が諸悪の根源」みたいな世論があるでしょ。日本にも外資系証券への嫌悪感みたいなのは存在する。そういうのは気にならないの?
A ならないですね。理由は明確で、僕はおカネを手に入れて自由を買いたい。10億円貯まったらセミリタイアするつもりです。自由というのは、そういった「世間の偏見」からも自由ということです。
C 実は、人生の最終的目標が「労働からの解放」である点では、俺も同じ考え方なんだよ。父親は民間企業の窓際族で、寝言で「○○(上司の名前)ぶっ殺すぞ!」とか叫びながら定年までしがみついてた。あんな生き方はしたくないってずっと思ってきた。
B しかし、年収300万円では一生解放はされないな。「働くことが美しい」という考えはないの?
C それ、僕は日本の洗脳教育だと思いますよ。マルクスを読めって感じです。基本的に、労働とは搾取されることですから。『経済学・哲学草稿』に〈人間の供給が需要よりはるかに大きいとき、労働者の一部は乞食の状態か餓死に陥る〉と書いてあります。