上位を狙わず、オンリーワン路線を歩むテレビ東京。全体の視聴率が振るわなくても経営状態が良好なわけは?

 かつて他局から「番外地」と蔑まされたテレビ東京が、存在感を増している。全体的な視聴率では大手民放4局におよばないが、2012年3月期における1株当たりの配当は、テレビ東京ホールディングスが20円なのに対し、視聴率低下に苦しむTBSホールディングスは15円。株価も9月18日現在ではテレ東HDのほうがやや高い。

 『ガイアの夜明け』や『ソロモン流』などオリジナル色の強い人気番組もあるから、視聴率も1日単位のプライム帯(午後7時~同11時)なら他局に勝つ日も珍しくない。しかも社員数はフジテレビの約1430人に対し、半分の約720人だから、固定費が桁違いに安く、効率がいい。全体の視聴率が振るわなくても経営状態は良好なのだ。

 前身の東京12チャンネル時代(1964年~81年)には経営危機の時期さえあり、「大阪の毎日放送に買収される」という今となっては信じがたい話もあった。当時、毎日放送のネット局はNET(現テレビ朝日)だったが、資本問題が背景にあって関係が万全とは言えず、有力準キー局の毎日放送にとって、自由になる東京の電波は魅力だったのだ。

「テレビマンは全員、ジャーナリストなんだ」

 テレ東が浮上した理由の1つはアニメ路線の成功だが、1997年にはアニメ『ポケットモンスター』を見た子供たちが吐き気や頭痛を起こし、矢面に立たされる。断続的に強い光を見ると起こる光過敏性発作だったが、当時はテレビで起こり得るとは監督官庁の郵政省(当時)さえよく分からず、「テレ東がとんでもないアニメを放送した」と袋叩きに遭う。当時の一木豊社長(96~01年)が衆院逓信委員会で謝罪する事態にまで発展した。

 ポケモンは当時、火曜午後6時半から30分間放送され、15%前後の視聴率を稼ぐドル箱だったが、騒動が起こるやテレ東は関連番組も含めて放送をすべて中止する。一方で発作を起こした子供たちの補償に全力を挙げた。その間、実はNHKのアニメでも類似例があったことが分かる。テレ東だけの問題ではなかったのだ。

 テレ東の真摯な対応ぶりが視聴者に受け入れられ、次第に放送再開を望む声が高まる。約4ヵ月後、ポケモンはゴリ押しではない形で復活を遂げた。この間の陣頭指揮にあたったのは一木氏で、その奮闘ぶりは今でも語り草になっている。

 一木氏は親会社である日本経済新聞社の元政治部長。ベトナム戦争の特派員も経験した古き良き時代の典型的な新聞記者だが、日経専務からテレ東社長に転じると、プロパーにも広く愛された。テレ東の社長は代々、日経出身であるため、ビジネスライクでドライと思われがちだが、実際には現在の島田昌幸氏(07年~)までアグレッシブで個性派が目立つ。

 筆者が2000年に一木氏を取材した際には「テレビマンは全員、ジャーナリストなんだ」と身を乗り出した。「視聴率は万全じゃない。テレビ局は文化を担っている」とも。社員にも同じことを説いたから愛されたのだろう。社長室に日本刀が置いてあり、ときには鞘から抜いて振るというから驚いたが、新聞人の気骨をテレビ界に持ち込んだ人だった。

 一木氏の前任者は元日経専務で最後まで社長候補だった杉野直道氏(89~96年)。日米衛星専用回線を開通させ、ニューヨーク・スタジオなどをつくり、国際金融情報の強化を進めた。杉野氏の先代がテレ東の中興の祖・中川順氏(75~89年)。日経で経済部長、編集局長などを歴任した中川氏は経済・経営通ぶりを発揮し、慢性赤字を一掃。本コラムで何度も書いた通り、テレビ局の資源は人しかない。

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