ドイツ
ベルリン新空港建設プロジェクトは、計画決定から今年でなんと14年!! そしてまた開港は延期された・・・。
またも開港が延期されたベルリン・ブランデンブルク国際空港〔PHOTO〕gettyimages

 ドイツの首都ベルリンで前代未聞のスキャンダルが進行中だ。今年の6月3日に予定されていたベルリン新空港の開港が、予定日まで4週間もない5月8日になって、突然、延期と発表されたのだ。それ以来、地獄のふたを開けたような大騒ぎが続いている。

 この新空港建設プロジェクトは、ベルリン市、ブランデンブルク州、そして、国が共同で進めてきたものだ。3者のホールディングが結成されたのが1998年。つまり、その話を耳にして、「首都に立派な空港ができるのなら、東京-ベルリン直行便が飛ぶに違いない。そのうちベルリンに引っ越そうか」と私が真剣に考えたのは、すでに前世紀(!)のこと。当初の開港予定は、確か2007年だった。

 開港延期は今回が初めてではない。少なくとも、3回ぐらいは延び延びになっている。とくに今回の土壇場の延期はひどかった。最高の茶番は、延期発表の直前まで、「すべて順調」と言わんばかりのニュースが華々しく流れていたことだ。お掃除軍団がターミナルホールの端から端まで元気に磨き立てている映像、そして広いホールでは、乗客に扮した何百人もの空港関係者や航空会社の職員が、ヘルメットをかぶり、ニコニコしながら、カウンターの前に行列を作って、チェックインのシミュレーションをしていた。

 後でわかったところによると、この時点で管轄機関による竣工検査の予定さえ立っていなかったというからビックリ。当局の発表に信ぴょう性が欠けるという点では、ドイツも北朝鮮に負けていないようだ。いずれにしても、プロジェクトの中枢のところに、超絶無責任者がいたとしか思えない。

新空港の稼動はさらに1年以上先

 このたびの大失策で、プロジェクトマネージャーの首だけは飛んだが、そのほかは、ホールディングの面々も、傘下グループの社長も、そして、何の監査もしていなかった監査役の役員も、全員そのまま。新しいプロマネには、かつてフランクフルト空港を作った人物が、急遽、引っ張ってこられた。

 そして、彼の指揮の下、進捗具合の点検とプランの練り直しで3ヵ月が経過した結果、ようやく先週、新しい開港予定日が発表された。2013年10月27日。3月と言われていた期日が、さらにもう一度7ヵ月延期されたわけで、この期日が守られるとしても、ベルリン空港が使えるのは1年以上先ということになる。

 もちろん、この遅延による経済的な損害は莫大なものだ。元々の建設費は17億ユーロだったが、それは前世紀の話で、すでに現在までの出費が31億ユーロに膨れ上がっている。今回の延期で、それがさらに12億円増えて、43億ユーロになると試算されたが、そこには、これから発生するであろう損害賠償の金額のすべてが入っているわけではなさそうだ。

 たとえばエア・ベルリンは、ドイツではルフトハンザに次ぐ大きな航空会社で、ヨーロッパを中心に多くの航路を持っているが、発着の3分の1がベルリン空港だ。もちろん、6月3日以後のフライトは、すべてベルリン新空港を使用ということで予約を取っていた。しかも、運行本数を増やしていたのに、やむを得ず、急遽、全便を既存の2空港に振り替えた。それがどんなに困難なことかというのは、素人にも十分想像できる。すぐに130万人の予約客に、飛行場の変更を知らせる手紙が送付されたという。

 貯蔵してある燃料も、早急に移動しなければいけない。新空港で完成している乗降用のノーズは、1年以上放置されることになるそうだ。莫大なお金のかかっている宣伝費も、いまさらどうするわけにもいかない。新しい空港はヴィリー・ブラント空港と名付けられ、かつてのドイツ首相とベルリン市長であったヴィリー・ブラントの名声を誇るように、すでに大々的なキャンペーンが打たれている。

 また、他の航空会社も被害は免れない。エア・ベルリンほどベルリン空港への依存度は高くないとはいえ、皆、ベルリン新空港の発着プランを組んでいたし、ドイツ鉄道も新空港に客を運ぶための新ダイヤを用意していた。

 一番気の毒なのは、新空港にテナントで入る予定だったさまざまな企業や店舗だ。開店4週間前と言えば、最後の追い込みに入る時期で、レストランにせよ、お土産屋にせよ、店舗はほぼ完成し、従業員を揃え、トレーニングにかかっていたはずだ。その他、運送会社も、清掃会社も、皆、スタンドバイの状態だったと思う。

 それが突然、ご破算になり、しかも、3ヵ月以上、次の開港予定さえちゃんと知らされなかった。こうなると、大きな会社なら損害をどうにか吸収できても、中小企業はそうはいかない。既存の店舗をかたにローンを借りて、新空港で店開きするはずだったような投資家は、事業が始まる前に倒産するしかない。皆、目の前が真っ暗だろう。

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