非営利セクターは今やテックの世界に? ゲーミフィケーションで大躍進のオンライン寄付サービス、Razoo

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「Razoo」のトップページより

 東日本大震災から1年半が経ち、私たちの働き方、生き方の価値観に静かな変化が訪れていると感じている人は多いのではないでしょうか? ボランティア活動に参加したり、NPO活動に関心を寄せたりしている人も多いことと思います。就職や転職先としてNPOを考えている人も中にはいるかもしれません。

 そんな中、先日目にしたあるインタビュー記事の中で紹介されていた米非営利団体CEO、Lesley Mansford(レズリー・マンスフォード)氏の言葉が印象に残りました。

 「The nonprofit world is now a tech world(非営利業界は今やテクノロジーの世界なのです)」

●「How A Gaming Guru Is Powering Up The New Social Philanthropy (いかにゲーム業界の第一人者が新しいソーシャル・フィランソロフィーを強化するか)」 Fast Company 2012年7月6日

 マンスフォード氏が昨年8月からCEOを勤めるRazoo(ラズー)は、オンライン寄付プラットフォームサイトを運営しているベンチャー企業です。2006年9月に設立されました。

 Razooは、いま日本でも話題になりつつある「クラウドファンディングサービス」のひとつで、NPO団体がこのサイトを活用して効果的に寄付を集めることができるというサービスです。類似サービスとしては、以前ご紹介した米国の『Causes』や『Crowdrise』、そして日本でも『Justgiving』『Readyfor』などがあります。

 参照:『進化するオンライン寄付のしくみ ~誰もがファンドレイザーになれる時代に』(2011年5月13日)

 8月中旬に、このサイトを通じて集められた今までの合計寄付総額が1億ドル(約780億円)を突破したことが報じられました。寄付を受けたのは、1万4000以上ものNPO団体です。

 驚いたことに、その寄付額の約6割以上は、マンスフォード氏がCEOに就任して以来の、直近9ヵ月の間に集められたものだというのです。

 Razooとは俗語で「小額のお金」という意味で、「チリも積もれば山となる」という願いを込めてつけられた名前です。一体、どのようにして短期間で6000万ドル以上の寄付を集めたのでしょうか?

 理由のひとつとして、マンスフォード氏のバックグラウンドが挙げられます。氏は大学を卒業後、アメリカの大手ビデオゲーム・コンピューターゲーム販売会社、エレクトロニック・アーツ(EA)社に就職します。実績を積んでマーケティング部門のVP に就任した後、オンラインゲームサイト(www.pogo.com)を設立(その後EA社に売却)、という華々しいオンライン・エンターテインメント業界でのキャリアを持っていました。

 マンスフォード氏のCEO就任後、特に効果を上げたのが、チャリティの世界にゲーム的な要素を持ち込んだイベント「Giving Day」でした。24時間のチャリティ・イベントとして、どこかの都市など特定の地域で行われます。

 「Giving Day」が取り組んでいるのは、ある特定の日に、特定の地域で活動する多数のNPOの参加を募り、一斉にオンラインの寄付キャンペーンをRazoo上で実施してもらう、というものです。寄付額を多く集めたNPOには追加で懸賞金を提供したり、各NPOの獲得寄付金額を可視化したりするなど、ついつい参加してしまうような「ゲーミフィケーション」と呼ばれる手法を取り入れたのです。

 例えば、今年6月にミネソタ州で開催された「Giving Day」のイベントでは、約3万5000人の寄付者が約3000のNPOに対し、合計1400万ドル以上の寄付を行ったことが話題になりました。

 Razooのサイト上では、各NPO団体が独自のファンドレイジングページを簡単に作成することが可能で、サイト上に動画を埋め込んだり、ブログを更新したり、オンラインで寄付をすることも容易にできます。また、一個人が特定のNPOを応援するするファンドレイザーとして、キャンペーンを展開することも可能です。

 「Giving Day」のような特定のイベントを設定すると、事前に各地域でソーシャルメディア活用の講習会を実施し、業界全体で機運を高めながら、当日のイベントを盛り上げることができます。また、イベント終了後も、各NPOはそれぞれのページを通じて自らの活動を広く知ってもらうことができますし、リソースの集積の場所として、また質問などに答えるコミュニティとしても活用してもらうことができます。

米国NPOセクターで拡がるソーシャルメディア活用 ~Facebook利用率はすでに98%

 ここで、今年4月に発表された米国NPOセクターでのソーシャルメディア・ツールの活用状況に関する調査結果を紹介します。非営利セクターにおけるテクノロジーの活用を推進するNTEN(Nonprofit Technology Network)が過去4年間毎年行っている調査で、本年の調査には3500団体以上が回答を寄せています。

The 2012 Nonprofit Social Networking Benchmarks

 このグラフは、過去4年間の主要ソーシャルメディア・ツールの使用状況を表したものですが、直近のデータによると、フェイスブックはすでに98%の団体が使用しています。また、フェイスブックで「いいね!」をしているユーザーの数も過去1年で30%増加し、平均8317人という規模にまで増加しています。また、ツイッターのフォロワー数はなんと80%の増加で、平均フォロワー数は約3290人となっています。

 では、日本で同様の仕組みを作ることはできるのでしょうか。もちろん、アメリカにおける非営利セクターを支える社会構造や、宗教的背景、法制度、そしてテクノロジー関連産業の勃興とIPOによる富裕層の存在など、直接日本の状況と比較することが適さない点も多くあります。

 ただ、無料でグローバルに使用可能なプラットフォームとしてのソーシャルメディア・ツールがここまで拡がりつつある今日、こうしたNPOとIT活用の潮流は国境を越えるレベルになっています。米国のNPOセクターで盛り上がりつつあるソーシャルメディアとIT 関連サービスの活用は、いずれ進化する形で日本にも拡がりうる、そんな本質的な変化を含んでいると私は思います。

 日本においてもそのような兆候が芽生えつつあります。9月15日には、日本財団において『CANPAN・NPOフォーラム「第2回NPO×IT Expo」 ~いま、会えるITツール・サービス企業』というイベントが開催され、参加企業にはマイクロソフト、グーグル、セールスフォース・ドットコムなども名を連ねています。

 こうしたNPOとテクノロジー活用に関し、米国業界内では「#nptech」(NPOとTechnologyの略)というツイッターのハッシュタグが使われ、組織を超えた幅広い情報交換が日常的に行われています。日本でも、今回のNPOxIT Expoを契機に、「#NPOxIT」というハッシュタグを通じて広く情報発信することを目指しています。今後もこの新しく生まれつつあるセクターにしっかり注目していきたいと思います。

本記事に関するご意見、ご質問、フィードバック等は筆者のFacebookページまでお願いいたします。ツイッターは@socialcompanyです。

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