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アップルに降伏したフェイスブックとHTML5の行方 【前篇】

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iPhone向けに作り直されたFacebookアプリ〔PHOTO〕gettyimages

 ここ数年で膨れ上がった次世代ウエブ技術「HTML5」への期待感が、最近急速に萎(しぼ)んでいる。その大きな要因の一つが、先月下旬にフェイスブックが起こした動きだ。同社は、以前から評判が悪かったiOS(つまりアイフォーン、アイパッド)向けのフェイスブック・アプリをゼロから作り直して、これをアップストアから再リリースしたのだ。

 この記事をお読み頂いている方にも、普段フェイスブックをアイフォーンからお使いの方がおられると思うが、「確かに以前よりもアプリの動きが速く、滑らかになった」という感触を持たれたのではなかろうか。実際、多くのユーザーはそのような感想を抱いているようだ(実は筆者自身は、以前とそれほど大差ないように感じているのだが、ここは大方の見方に従っておこう)。

 それ自体はとても良いことなのだが、一方で今回のフェイスブックの動きを複雑な思いで見つめている人たちもいる。それは冒頭に記した、「HTML5」と呼ばれる新しいウエブ技術を支持してきた人たちだ。その説明に入る前に、HTML5とは何かを簡単に解説しておこう。

 HTML5とは、私たちが普段使っているホームページ(ウエブページ)を制作するためのコンピュータ言語「HTML」のバージョン5である。今までのバージョンと何が大きく変わったかというと、それは「JavaScript」や「CSS」などプログラミング関連の機能が大幅に強化されたことだ。つまりHTML5を使うと、従来の単なる静的なホームページのみならず、もっとダイナミック(動的)なアプリケーション・プログラム(アプリ)も作ることができる。これがHTML5の最大のメリットだ。

閉鎖的なモバイル・アプリ市場を解放するHTML5

 このHTML5の応用領域は、パソコンからスマートTVのような次世代家電、さらには自動車に搭載される車載システムなど実に広範囲に渡っている。が、まず真っ先に期待されているのが、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末への応用だ。なぜか? それはHTML5が、アップルやグーグルなどが支配する「クローズド・プラットフォーム(閉鎖的プラットフォーム)」の世界を解放してくれるかもしれないからだ。

 クローズド・プラットフォームとは、文字通り「自分たちのプラットフォームは同業他社には使わせない」というスタンスだ。その典型は、アップルが持っている「アップストア」というアプリ・マーケットである。つまりアップストアから配信されるゲームや電子書籍など各種アプリは、アイフォーンやアイパッドなどアップル製のモバイル端末でしか使えない。

 同じことはグーグルについても言える。彼らのマーケット「グーグル・プレイ」から配信される各種アプリは、やはりグーグルの提供するモバイルOS「アンドロイド」を搭載したスマートフォンやタブレットでしか使えない。アップルやグーグル以外にも、アマゾンやマイクロソフト、さらにはノキア、RIM、サムスンなど、モバイル産業の主要プレイヤーはいずれも、基本的には「クローズド・プラットフォーム」戦略をとっている。

 なぜか? それは「クローズド・プラットフォーム」が客(消費者)の囲い込みに使えるからだ。たとえばアップストアから配信される便利で楽しい各種アプリが「アイフォーン」でしか使えないとなれば、消費者はますますアイフォーンを買うようになるだろう。これに負けじと、グーグルを始めとする同業他社も各社のアプリ・マーケットの品ぞろえを充実させて、アップルに対抗する。これがモバイル産業のクローズド・プラットフォーム化に更なる拍車をかけている。

 クローズド・プラットフォームは別名「ウォールド・ガーデン(壁で仕切られた庭園)」とも呼ばれ、実は消費者にとって好ましい状態ではない。なぜなら彼らは一旦、アップルやグーグルの壁で囲われてしまうと、その外に出られなくなってしまうからだ。

 さらに各種アプリを開発・製品化するソフトウエア開発業者にとっても、クローズド・プラットフォームは悩みの種と言われてきた。なぜなら同じ内容のアプリでも、アップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、その他大勢のプラットフォーマーに向けて、何度も作り直さねばならないために、開発コストが大幅に膨らんでしまうからだ。

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